誘惑
02
友一が友美と一緒に帰宅している時、奈和は、常夫、洋祐の三人に分かれて阿弥を追っていた。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・阿弥ちゃん、どこ?」

奈和は、先程友一が阿弥に会った場所を探し回った。すると・・・

「阿弥ちゃん!」

そこには、空を見つめる阿弥がいた。

「奈和ちゃん・・・?」

阿弥も、奈和の声に気づいたようだ。

「よかった・・・牧野君が君のこと探してたんだよ。まだ近くにいるかもしれないから、一緒に行かない?」

奈和がそう聞くと、阿弥は悲しそうな顔で、

「ごめん・・・無理。」

と答えた。

「どうして?」

「彼のことは、もう考えたくない。」

さらに続けて、

「信じてたのに・・・私も彼のこと、もう一度信じたかったけど、もう後戻りはできない。だから・・・」

「阿弥、早くしろっ!」

阿弥が何かを言いかけた時、後ろから男子の声がした。

見ると、雄伍が缶ジュースを飲みながらこちらに近づいてきているのが見えた。

「北川君?」

「あれ?古畑じゃん。何してんの?」

「そっちこそ何してんのよ!阿弥ちゃんは・・・」

奈和が最後まで言い終わらないうちに、雄伍は、

「牧野の彼女とか言うの?悪いけど、こいつはもう俺の彼女なんだよね。牧野に味方すんだったら、二度とこいつに近づくなよ。」

そう言って、阿弥の手を引き、連れ去ろうとした。

「阿弥ちゃん!・・・・」

しかし、声は届かない。阿弥は、雄伍と共に消えてしまった。

「どうしよう・・・このままじゃ・・・」

奈和は知っていた。雄伍の隠れた残酷な素性を。阿弥と友一が、その残酷な雄伍の犠牲になってしまうことが、何よりも恐ろしかった。
















darkhero ( 2014/06/04(水) 09:27 )