リア充の宴
16
「いやぁ、お前やるなぁ。尊敬するわ。」

舞台裏で常夫が洋祐に話しかけている。

「ホント、すごいよねぇ・・・半日であんなクオリティの歌なんて作れないよ、普通。」

奈和も同じく感心している。

「いやいや。歌詞の元がちゃんとしてたから、イメージしやすかった・・・っていうか、まあそんな感じだよ。」

洋祐は照れながら言った。

と、その時、

「あっ、牧野くーん、阿弥ちゃーん!」

奈和が遠くを見ながら手を振った。

「野木君、お疲れ様。」

「すごい人気だったね!」

阿弥が洋祐に軽く拍手をしながら言い、友一も彼を褒め称えた。

「ありがとう。マジでやってよかったよ。」

洋祐はみんなに一礼すると、

「それじゃあ、みんなにサインしてくるから、これで。」

と勝ち誇ったような顔で手を振り、その場を去った。

「じゃあ、俺も片付けしてくるわ。閂も込みでさ。」

友一と阿弥はハッとしたが、すぐに安心した。

「ゴメン、頼む!」

友一が焦り気味で言うと、常夫は背を向けて走ったまま手を振り、走って言った。

「じゃあ、僕もクラスの片付け手伝って来る。」

友一もどこかへ行き、阿弥と奈和だけが残された。

「それにしても、私たちの事、よく知ってるなあ。」

会場の客の多くが涙した歌詞。それの元ネタが自分達であるなら、結構詳しく知っていないとあんな歌詞は出来ない。そう思ったのである。

「ああ、あれね・・・実は、私が教えたんだ。」

奈和が、若干申し訳なさそうに言った。

「えっ、そうなの?いつ教えたの?」

「準備日の時。私、実行委員だったから、野木君とよく打ち合わせしてたんだよね。それで彼と仲良くなって、二人の話をしたんだ。」

「そうなんだ・・・」

「黙って野木君に言った事、ごめん・・・」

「別にいいよ。」

二人はそんな話をした。

「ああ、それと・・・」

奈和は続けた。

「何かあったら、私でよければ相談に乗るからね。私、絶対に阿弥ちゃんの事、裏切ったりしないから。」

「え・・・」

「ぶっちゃけ私たちのこと、何ていうか・・・あんまり信用してなかったんでしょ?」

奈和は分かっていたのだ。自分がみんなを信じきれずに、“友達の輪”に入りきれてなかった事を。それで、今まで別のクラスであるにもかかわらず、自分と仲良くしてくれていた。

そのことに気づいた瞬間、目から滝のような涙が出てきた。

「奈和ちゃん・・・ありがとう・・・」

そう言いながら抱きついてきた阿弥を、奈和は涙目になりながら、優しく抱きしめた。











darkhero ( 2014/04/30(水) 16:32 )