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次の日――――
「これより、第48回文化祭、二日目を始めます。クラブ活動等の出し物がある生徒は、顧問及び担任と話し合い、どちらを優先するか決めてください。それでは、ルールを守って、めいいっぱい楽しみましょう!」
昨日とほとんど同じアナウンスと共に、文化祭の後半が始まった。昨日と同じように生徒達は思い思いの場所へ散っていく。
「もしもし?・・・おお、分かった。楽しみにしてるぜ。」
常夫は電話を済ませ、友一のところへ向かった。
「ワリィ、待った?」
「いや、大丈夫。」
友一はそう答えると、
「それじゃあ、どこ行く?」
と尋ねた。阿弥はクラスの、奈和は部活の出し物のためここにはいない。
「ここ!ここ行こうぜ!」
常夫が指差したところには、“コスプレ喫茶”と書いてある。下級生の出し物のようだ。
「マジ?ここ行くの?」
友一が怪訝な顔をすると、常夫は、
「いいじゃんかよ〜。行こうぜ。」
と言って、半ば強引に友一を連れて行った。
◇
「いらっしゃいませ!」
戦隊ものの衣装を着た男子が迎え入れた。
「こちらへどうぞ!」
席に座ると、常夫がその男子に、
「よぉ、元気?」
と言った。聞くと、後輩らしい。常夫がここに来たのも、それが理由だそうだ。
「ご注文はどうしますか?」
今後は、メイド姿の女子が注文を取りに来た。かなり大人びた見た目で、美人だ。
二人はそれぞれ注文を済ませた。
「なぁ牧野。」
「ん?」
「今の子むっちゃ可愛くね?後で名前聞こ。」
「あんまりしつこくすんなよ?」
他愛の無い会話を済ませ、パンフを見ながら次の行き場所を考えていると・・・
「お待たせしました。」
先程の女子が注文したものを持ってきた。
「君の名前、教えてくれない?」
早速常夫が質問をした。すると、
「北川です。北川綾巴です。」
友一は“北川”という名前を聞いて、久しぶりの感覚に襲われた。いつかの屋上で、ゲームセンターのトイレ内で体感した、あの感覚。
「綾巴?いい名前だね。っていうか、北川ってことは・・・」
常夫も薄々気づいたようだ。
「はい。北川雄伍の妹です。」
綾巴はそう言うと、友一に向かって
「兄が迷惑をかけたみたいですね。すみません。」
と言いながら、お辞儀をした
「ごゆっくり。」
と笑顔でささやき、裏方へ戻っていった。