01
秋が深まる季節―――
友一は、晴れて阿弥と付き合うことになった。とはいえ、そこまで頻繁にデートなどはしない。お互いを求め合う・・・いわゆる“ムフフ”な事はおろか、キスすらまだ一度もしていない。
それでも友一は幸せだった。阿弥も幸せでいてくれているし、何より“一人”じゃなくなった。
「おい牧野、お前はどれがいい?」
ぼんやりと外を眺めていると、不意に教壇に立っている生徒に何かを聞かれた。いきなり聞かれたのであたふたしていると、
「おいおい、また柴田のこと考えてたのかよ?」
と言った。そいつの一言で、教室中が笑いに包まれた。
黒板には箇条書きでこんなことが書かれている。
・カジノ
・喫茶店
・縁日っぽいゲーム
・お化け屋敷
・自作の映画
・ホスト、メイド喫茶
言うまでもなく、文化祭の出しものについての話し合いだ。
「僕は・・・別にどれでもいいかな・・・」
無難な答えを出すと、奈和が「しめた!」と言わんばかりの顔で、
「じゃあ、映画の主演やってよ!ラブコメでキスシーンも入れようと思ってるんだけど・・・」
「うわわっ!ちょっと待って!」
友一の必死な頼みに、教室の笑い声は一層大きなものとなった。
賛否両論の末、結局映画になり、友一は主演を務めることになってしまった。友一の必死の弁論の甲斐あって、ラブコメではなくただの“コメディ”映画にはなったが・・・
「こういうのって・・・リア充がやるものなんじゃ・・・」
早速、映画の撮影に入った。