04
―――何か、ほかの人より上を行くものを作れ。特技でもなんでもいい。―――
友一は頼人に言われた一言を思い出していた。
「ほかの人より・・・上を行くもの・・・」
ナイフ男に掴まれている阿弥を見ながら友一はつぶやいた。
友一はこれと言って“ほかの人より上を行くもの”はない。でも、阿弥を守るためには、それがないといけない。
「そうだ・・・僕は・・・」
友一はほかの人より上を行くものを見つけていた。それは・・・
「阿弥を・・・大事に思う心・・・だけは・・・」
かなりベタなことではあるが、今の友一にとっては立派に誇れることだった。
その気持ちがあれは、阿弥を守れる気がした。そして・・・
「う、うわあああああっ!!」
友一はナイフ男に殴りかかった。
「ん?・・・」
ナイフ男が振り返ると、目の前に拳があった。
「っっっっ!」
ゴキッ!
殴る瞬間、友一は目をつぶっていたので周囲の状況が分からなかった。しかし、鈍い音と、手に何かが当たる感覚が確かに友一の頭に入ってきた。
恐る恐る目を開けると・・・
友一のパンチが、ナイフ男の眉間にしっかり入っていた。それとともに、ナイフ男は音を立てて倒れた。
「・・・・・」
あたりは恐ろしいほどに静まり返っていた。
「柴田さん・・・大丈夫?」
友一が手を差し伸べると、阿弥は
「ありがとう・・・」
と言って、ただただ友一の手を握り締めていた。