02
ミネラルウォーターを飲んだ後の撮影も順調だったのだけれど
(グ、グゥゥゥゥ)
想像していたより早く、私のお腹の虫は活動を再開した。
(早すぎでしょ……)
我ながらそう思った。
今度はお腹を押さえるわけにもいかないから、佳穂も含めて周りの人全員に聞かれてしまっている。
覚悟はしてても、やっぱり恥ずかしいなぁ。
それに。
(うぅ、トイレにも行きたくなってきた)
朝から飲み物しか取ってないからか、お腹の少し下からも主張が聞こえ始めていた。
(佳穂の言う通り、一気飲みするんじゃ無かったなぁ……)
後悔先に立たず、撮影はまだまだ続く。
(まだかなぁ……)
そう思いながら、さらに数十分。
「はい、少し休憩していてください！」
(やった！)
と、思ったのもつかの間。
(そういえば、トイレってどこなんだろう？)
初めてのスタジオだから、トイレの場所も把握していなかった。
スタッフさんに女の人がいれば聞きやすいんだけれど……
すると、アシスタントさんに女の人がいらっしゃった。
「あのっ」
「はい、どうしましたか？」
「あの、お手洗いってどこでしょうか？」
同性の人でも少し恥ずかしいけど、背に腹は変えられない。
「あぁ、通路を出て突き当たりの左側ですよ。」
「ありがとうございます！」
お礼を伝えると、巻いていたタオル取って水着のままトイレに向かう。
水着のままトイレに行くなんて、学生の時以来だなぁ。
アシスタントさんの言う通り、通路の先にトイレがあった。
扉を開くと、洋式トイレが1台あった。
トイレの扉の鍵をかける。
蓋を開け、便座に背を向ける。
(スルッ、スルッ……)
水着の両端に手をかけて膝元までおろす。
そして、お尻を便座に乗せたその瞬間だった。
(ヒヤリ……)
「キャッ！」
お尻丸出しのまま立ち上がり、思わず声も出る。
(チョロッ)
(あっ！)
びっくりした反動で力が抜けてしまったのか、少し出てしまった。
幸い、床にはこぼれなかったけど、便座を少し汚してしまった。
(あっちゃあ……)
(カラカラカラ)
ペーパーを取り、汚してしまった部分を拭き取る。
それにしても久々に便座が冷たいパターンに当たってしまった。
(座らないといけない時はこれがあるからなぁ……)
座ってするしかない、女ゆえのアクシデントだった。
2度目は流石にゆっくりとお尻を乗せる。
少しヒンヤリはしたけど、もう大丈夫。
両足に込めていた力を抜く。
(チョロ、チョロロロ、チョロロロロロシュウゥゥゥ……)
(ふぅ)
溜まっていた分が一気に解放される。
(カラカラカラ……)
まだ出てる最中だけど、ペーパーを巻いて右手に取る。
(シュウゥゥゥゥ……チョロロロロロ)
出し切ったのを確認してから、大切な部分にペーパーをあてがう。
今日のために、サロンに行って綺麗にしていた大切な部分
おかげで拭くのもすぐ済む。
お尻についた滴も拭いてっと。
(スッ、スルッ)
水着を元に戻す。
(ジャアァァァァァァ)
水を流して外へ。
元いたスタジオに戻ると。
「あ、いずりんおかえり。」
さとかほがそう言うよりも先に、私の目はあるものを映し出していた。
(お、美味しそうなたこ焼き……)
(グキュルル、グゥゥゥゥ)
大阪生まれの私にとって、これ程お腹の虫に響く食べ物はない。
「お腹さんは、いずりんに似て素直だね」
いくら同期でもそう言われるとなんか恥ずかしくて顔が赤くなるのを感じる。
「いずりんが大阪出身って聞いて、スタッフさんがこっそり買いに行ってたんだって～」
「今日のためにストイックな生活してくださったと聞きまして、ささやかですけどご褒美にと思いまして」
あ、ありがとうございます！！
でも、撮影は……
「もう終わりですよ。」
そうだったのですね。
「さっ、いずりん食べて！」
うん、ありがとう
そう言って私はつまようじを手に取り、たこ焼きをひとつ口に入れる。
「ん～、美味しいぃ～」
思わず声が出ちゃうほど、たこ焼きは私の心とお腹を満たしてくれる。
「ふふ、いずりん可愛い！」
耳元で佳穂がそう呟く。
その瞬間、私の顔は真っ赤になった。
「ちょっと、冷やかさないでよ……」
「え～、ホントのこと言ってるのにぃ」
う、嬉しいけど恥ずかしい……
佳穂の釣り師術って、私でもハマるんだな
改めて同期ながら凄い子なのだと実感した。
「ごちそうさまでした！」
「すごい、あっという間に食べたねぇ」
お腹の虫に促されるように、5分もしない内に8個入りのたこ焼きを完食した。
「あの、ありがとうございました。」
「いえいえ、美味しそうに食べてらっしゃったので私達も良かったですよ」
優しい皆さんでほんと良かった！
またお世話になれれば良いなぁ。