{二重人格}
「コンサートで…?」
「マジかよ…」
「…聞いてない。」
「そりゃあ昨日決まったことだし、矢神君にも言って無かったからね?」
ちょっと、いやかなり話がとびすぎててなにを言ってるのかがあんまわかんないんすけど…?
そんなデビューのしかたって…良いんだろうか?
俺たちが呆然としていたら野崎さんと優さんの間で話は進んでいた。
「洋介…洋介!」
「ん?あっはい!」
「グループ名のことなんだが…」
「グループ名…ですか?」
「3人グループ名はもう秋元さんが決めてある。洋介たちは…今日から"Trump"(トランプ)だ!」
優さんが突拍子もなく突然大事な話をぶっこんでくる。
Trump、か…
深い意味は無いんだろうなぁ〜。
だけど…良い。
「良いですね、Trump…気に入った。…なぁ大我?」
「あぁ…最高だな!」 「…僕も良いと思う。」
「じゃあ決定だな!」
「じゃあ次はバンドの時のことだが…こっちである程度は考えてみた。」
「もちろんレコード会社としての意見もふまえてもらったよ。これを見てくれ。」
そう言って野崎さんが足元のカバンからプリントを取り出して俺たちに配りだした。
プリントの内容は言っていた通りバンド時に関することだった。
「バンドの時は迅流君と矢神君のツインボーカル、城野君のサブっていうふうに行きたいと思う。」
「楽器についてはギターが洋介、ベースが龍司、ドラムが大我にしてみた。」
「龍司はベースで洋介がギターなのは分かるんすけど…俺がドラムですか?」
「大我がドラム未経験なのは分かってる。でもこの3人でやるにはリズム感がある大我が適任だと思ったんだよ。」
「それに迅流君と矢神君の歌唱力をいかしたかったからね。」
「リズム感…分かりました!やります!」
「大我…」
「…上手く乗せられたね。…大我って単純?」
「考えなしのド単純だ。」
「…2人のことが分かってきた気がする。」
「なんかいったかコラ!」
「お前絶対聞こえてんだろ?」
「…2人ともまだ打ち合わせ終わってない。」
「「…すまん。」」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「疲れた…」
「レコーディングってこんな疲れんのかよ…」
打ち合わせが予想以上に早く昼前に終わり、[イマジネーション]の修正するところがあまり無かったためレコーディングも一気にやったわけだが…
人って急にあんなに変わるもんなんだな…
いざやりだして歌い出すと俺と大我がものすごい初心者っぷりを発揮してしまった。
それについて教わりながら直していたら龍司の性格が凶変した。
「ありゃもう二重人格の域だよ…」
「怖かった…。一人称がいつの間にか僕から俺になってたし…!」
「…ゴメン。」
「自覚あるんかい!」
「…良いツッコミ…!」
「仲良くなんの早いな〜3人とも。」
俺も大我も体力という体力、気力という気力を全部持ってかれちまったよ!
でも矢神龍司…こいつとは上手くやってけそうだ。
赤くキレイな夕焼けが俺たちを彩っていた。