{決断}
「着いた…」
「あぁ…」
俺達の目の前には昨日ぶりの理事長室。
やっぱり二回目でも変に緊張するな…
耳をすますと微かに扉の向こうから会話している声が聞こえる。
もう中で待ってる、か…
「行くぞ。」
「おう。」
コンコン
「おぉ来たか。入りたまえ!」
「「失礼します。」」
「やっと来たか。待ちくたびれたよ。」
と言ってもまだ朝の8時なんだが…
…何時からいたんだ?
「いきなりだが…聞かせて貰おうか。」
「俺は、行きます!」
「迅流君は?」
「俺も行かせてもらいます。」
「わかった。…二人の勇気ある判断に感謝しよう。」
秋元さんと握手を交わす俺達。
後悔は無いけど、これでよかったと自信がある訳でもない。
だけど、やるしか…ないんだ。
「それはよかった!我が校からスター誕生かもな!」
「かも、じゃあない。誕生したんだ。」
変にハードルを上げないで頂きたい…
まだデビューも決まった訳じゃないのに。
「では、急だが今日の昼の便で東京へ来て貰う。」
「今日の昼…ですか!?」
これは随分と急過ぎやしないか?
本当に今日がギリギリだったということか…
「主な家具は部屋に有るからそれ以外の物の引っ越し準備をしてくれ。11時にスタッフが家に迎えに行く。それまでに終わらせておいてくれよ?」
「…分かりました。では、失礼します。」
「失礼します。」
11時か…時間が無いな。
とりあえず家に帰るか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「じゃーな〜!」
「また昼にな!」
カバンから鍵を取りだしドアを開ける。
相変わらずほとんど何もない寂しい部屋だなぁ…
さて、荷物をまとめるか。
「キャリーバックは…お!あったあった。」
押し入れの中から少し埃の被ったキャリーバックを取り出す。
今考えると持っていく物は数着の服と小物ぐらいしかないな…
ま、ゆっくり詰めていくか…
「30分もしなかったな…荷物まとめるの。」
しっかし東京に行ったら行ったでかなり忙しいんだろうな。
当面の俺の目標は金を貯めて母さんを病気の治療が病院に移すことだな…
「…がんばろ。」