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あっという間に中間試験までの一週間は過ぎ、今日はその中間試験当日であった。
つまりは俺と梨加が勉強してきた毎日からは今日を持って解放されることとなる。
試験の為、いつもより少し早く学校が終わったのだが、今日は理佐の酒屋に仕入れた酒類が多く届くことになっているので、急遽その手伝いに行くことになったのだ。俺は梨加に平謝りして急いで理佐と一緒に酒屋へと向かった。手際良く行えたので一時間ほどで仕入れた商品の納品と仕分けを済ませることができた。
夕日が傾き、辺り一帯を茜色に染め上げる頃、酒屋に珍客が訪れたのだった。
「えっ?」
俺は一瞬目を疑った。
この酒屋に訪れるのは大概おじさんが多く、若い人などが訪れることはあまりない。ましてや、未成年の”女子校生”なんて来るはずもないのだが……
訪れた珍客とは恋人でもある渡辺梨加であった。
唐突にお店に現れたと思うと、のそのそと店内を一周し、日本酒の一升瓶を手に持ってレジへとやってきた。
ドン、と置かれた一升瓶に理佐は目を丸くしたが、あくまで冷静に対応する。
「ねぇ、あんた何してんの?」
「……これ、買います」
「未成年に売る物はないよ」
「……ごめんなさい。冗談です」
理佐に予想以上に冷たくあしらわれたことに驚いたのか、梨加はワナワナと慌てている。あいつは何でここに来てんだよ、と俺は頭を抱えるが、俺が行かないことにはあの状況はどうしようもないだろう。
俺はレジまで向かい、一升瓶を手に持つ。
「何してんのさ?」
「あ、達彦くん。ちょっと様子を見に来たくて」
「様子を見に来るって、ここは梨加が来ても何も出来ないよ?」
「ひょっとしたら買えるかな〜なんて思って」
「梨加、制服を着てる時点でダメだよ。てか、理佐と面識あるでしょ」
「ハッ、そうだった……」
梨加はハッとし、自分が制服で来てしまったことを後悔しているようだった。いや、それ以前の問題なのだが。
俺たちのやり取りを見ていた理佐は呆れたように額に手を置く。
「達彦くん、今日は帰っていいよ。納品終わったし、助かった。急に頼んだから、予定崩れたでしょ」
「いや、まあ俺は別に大丈夫だけど」
「いいからさ。試験も終わったことだし、彼女の相手しなよ」
「……」
横でスンとしている梨加を一瞥する。
梨加は寂しくて俺に会いにここまでやってきたのだろうか。まあ、俺目当て以外理由は見当たらないのだが。少し、簡単に放置しすぎたのかと反省してしまう。
「今からデートでも行く?」
「いや……今日はお泊まりする」
「どこで? 俺の家?」
そう訊くと、梨加は俯き気味に頷いた。泊まりに来るなんて一言も聞いていなかった為、少し困惑した俺だが、今の梨加のお願いを断るのも何だか気が引けてしまい、俺は梨加のお泊りを承諾してしまう。
「はいはい、惚気は家の方でやってくださいな」
理佐は怪訝そうな表情で、俺と梨加を店から出るようシッシッと手を払った。