06
夕焼けに染まる街に繰り出した俺と梨加は大型ショッピングモールへと来ていた。放課後の時間帯から上手く時間を過ごせる場所が思いつかず、隣駅のショッピングモールを行動範囲とした。
「これはどうかな?」
「うん。似合うよ」
「じゃあ、こっちは?」
「それも似合うね」
「う〜ん……これも良いと思うんだけどな〜」
「うん。良い感じ」
「もうっ! 達彦くん、さっきから曖昧な反応ばっかだよ……」
と、まあこんな調子で女の子のショップに慣れないながらも、梨加が選んだ服に対して感想を言っていた。
女の子の買い物に付き合うのは難しい。言葉通り似合っているが、それ以外の言葉で上手く表現できないのだ。女の子のファッションに口を出せるほど詳しくないし。
あまり梨加の役に立てなかったようだが、今のこの時間が堪らなく幸せだ。何というか、デートらしいというか青春っぽいというか。言葉には表せない甘酸っぱさが今ここにある。
一通り、梨加の服屋巡りが一段落つくと、俺らは建物内にあるアイスクリーム屋に立ち寄っていた。俺はチョコ味のアイスを、梨加はイチゴのアイスを食べながらしばしの休憩を取ることにした。
結局の所、何か買った訳ではないのだが、本人なりには満足したらしく、さっきから鼻歌を口ずさんで上機嫌だ。
「これ美味しい」
梨加は目を輝かせながらイチゴのアイスを頬張っている。付き会い始めてから多く見ることとなった素の梨加。感情を表に出すのが苦手な彼女だが、決して感情が乏しいわけではない。
人以上に楽しんだり、笑顔を見せたりするし、怒りを露にすることだってある。
俺が不用意に女の子と喋り過ぎたりすると、数時間くらいは拗ねたりしている。かと思えば、夜に寂しくなって電話を掛けてきたりするが、睡魔に負けて数分後に寝落ちしてしまうこともしばしば。
未だに顔を合わせると赤面することもあるが、最近ではようやく手を握っても普段通りに接することが出来るようになった。
色んな表情を見せる梨加。
付き合い始めは自分の中でも迷いがあった俺だが、着実に梨加に惹かれていっている。
「ねえ、達彦くん」
「どうしたの?」
「そのアイス……ちょっと食べてみたいな」
少し俯き気味に俺の手元にあるチョコ味のアイスを見つめながらそう言った。俺とは目線を合わせない。おおかた、恥ずかしいから目を見てお願いできないのだろう。まだまだ恥ずかしがり屋の梨加。恥ずかしながらも梨加なりのアプローチを仕掛けてくるその姿につい微笑んでしまう。
「いいよ。はい、あーん」
俺は自分のスプーンでアイスを一口すくい、梨加の口元まで運んだ。