十四話
「あー頭痛い。薬あったっけ?」



 翌朝、台所の引き出しの中をごそごそと漁る私に制服姿の好花が呆れた様に言う。



「お姉ちゃん二日酔い?」



 私はやっと見つけた頭痛薬を2錠、口の中へ放り込む。



「久美、あんたまた朝まで飲んでたんでしょう? 彰くんも一緒だったの?」



 母がエプロンで手を拭きつつ、呆れ顔で私を見た。



「いくら婚約者と一緒だからって、朝帰りはやめなさいよ? 嫁入前なんだし、近所の目もあるでしょう?」

「わかってるよ」



 私はそう言ってグラスの水を飲み干すと、家族団欒のテーブルに向かって言った。



「その代わりお母さんたち、彰のこと婚約者とかいうのはやめてよね」



 母が驚いた表情で私を見る。好花は牛乳をカップに注ぐ手を途中で止め、父は黙って新聞から目を離した。



「え? どういうことなの、それ?」

「どういうって、そういうことよ」



 私は流しの蛇口をひねる。目が覚めるほどの冷たい水が私の手とグラスを冷やしてゆく。



「もう彰は婚約者でも恋人でもなんでもないから。ごめんね。お母さん、結婚式に着る服まで買っちゃったのに」



 母がじっと私のことを見つめている。私はそんな母と目を合わせないまま、蛇口の水を止め、台所を出た。




まるで悲劇のヒロインね



 心の中でどこか冷めた私が、他人事のように笑っていた。



鶉親方 ( 2020/02/18(火) 20:38 )