八話
「そのお肉の秘密ってなに? 私に教えてよ」


 あれは忘れもしない去年の冬。せっかくの日曜日だというのに私は熱を出して、彰のベッドで1日中ごろごろしていた。そんな私に彰がとっておきのビーフシチューを作ってくれたのだ。



「知りたい?」


「うん、知りたい」


 ベッドの上で温かいシチューを食べながら、私はじっと彰を見た。彰はそんな私の頭をくしゃっと撫でた。



「じゃ結婚しようか?」


 彰が言った。


「一緒に住めば、そのうちわかるよ」


 それが彰のプロポーズの言葉だった。









「久美? もしかして泣いてるの?」


 あまりにも笑いすぎて涙をこぼしている私を見て、史帆が少し不安げに言った。


「あはは、笑い過ぎちゃった。ちょっとトイレね」


 私はそう言って立ち上がる。彰がじっと私のことを見つめているのがわかる。





涙が止まらない

彰に思い出してほしい

すべてを思い出してほしい

ただそれだけでいい



鶉親方 ( 2020/01/30(木) 23:46 )