34.5話 月輝波鮮
「もう大丈夫みたいね?」



 ロッカールームで背後から声をかけられ振り向いた。



「いいカオしてんじゃん」



 そう言って美月は小さく笑った。



「うん。もう大丈夫。心配かけてごめんね?」

「いいってば。仙道さん、大丈夫だったの?」

「うん。今は大丈夫だと思う」

「そっか。じゃ、もう牧村さんもお役御免かな」



 美月は微笑みながらロッカーを開けた。



「知ってたの!?」

「ううん? 詳しいことは全く。でもあの人、不安そうに仙道さんのこと見てたから」

「そう・・・だよね。・・・って、あれ? 美月、そんなに公志くんと会ってたっけ?」

「・・・美波にしては珍しくいい勘ね」

「え? えぇ!?」

「付き合ってないわよ?」

「そう、なの?」

「いい反応。それも仙道さんのおかげか。なんかムカツク」



 言葉の意味が解らず、きょとんとすると美月は苦く笑った。



「3年」

「え?」

「美波と出会って3年よ? こんなに毎日一緒にいたのに、美波っ て私のこと、お店の子ぐらいにしか思ってないでしょ?」

「そんなこと・・・」

「ムカツクなー。私は美波のこと友達だと思ってんのに!」

「美月・・・」

「そろそろ"お店の子"から"友達"に昇格させなさいよね!」

「美月は・・・友達だよ? 私の大事な友達」

「そう? じゃ、もう3年かけて"親友"と呼ばせてみせるわ」



 美月は悪戯っぽく笑ってロッカーを閉めた。



「ついでに、牧村さんも落とす!」



 笑ってロッカールームを出て行く美月を呆然と見送った。







そっか。美月は公志くんが好きなんだ

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・





「えぇっ!?」



 フロアにまで届いたのか、美月の笑う声が聞こえた。



 私はどうしようもなく緩む頬を押さえた。






そっか。美月が公志くんを・・・





 なんとなく、私も嬉しくなっていた。



■筆者メッセージ
そう言えば、拍手メッセージで指摘されて気付いたのですが、用語解説がいつの間にかなくなっていました。

主観たっぷりのカクテル説明が何気に求められたことに驚きですね。抜けてた分も随時追加していきます。


またお願いします。
鶉親方 ( 2018/11/21(水) 00:17 )