1話 No.1の女
煌びやかなネオンが男女を魅了する街。人波に紛れてクラブやスナック、バーのビラが飛び交う。中には法の目を掻い潜り客引きをする輩もいる。
クラブ“OZ”はそんなビラの類を必要としない高級クラブ。
平日にも関わらず店内は空席のない状態で、男達が笑みを浮かべホステスとの一時を楽しんでいる。
「ねぇ、美波ちゃん、このあと一軒、どう?」
「ごめんなさい。今日はミーティングがあるの。また今度、誘ってくださいね?」
男の要望に美波はとても残念そうな顔をして少し頭を下げると男のグラスをさり気なく持ち上げ、氷を足しウイスキーを注ぐ。
水はほんの少しだけ。この男はこの水割りを好む客だった。
そっとグラスを男の前に置き、微笑みかける。男がグラスを口に運ぶのを待って、黒服が美波の後方で膝をつき小声で声をかけた。
「美波さん、7番ご指名です」
「はい」
美波は目の前の男ににこりと微笑む。
「ごめんなさい。指名が入ってしまったの。ゆっくりしていらしてね?」
「そんなぁ。今日は美波ちゃんを独り占めできると思ったのに・・・」
男は残念そうに眉を下げ、座り心地の良いソファーの背に凭れた。
美波は少しだけ笑みを見せ、自分のグラスにコースターを乗せた。そして、静かに立ち上がり、黒服に言われた7番テーブルに移動した。
「ご指名ありがとうございます。美波です」
梅澤 美波。
クラブ“OZ”のNo.1ホステス。