06
それぞれ顔に傷を負っているチーム火鍋を南那と真子が治療していた。飛び込んできた奈々と祐樹を一瞬見た朱里だったがすぐに目を逸らし気まずそうな表情を浮かべた。
「ちっ、お節介委員長が。こんなの大したことねえのに」
「大したことあるじゃねえか! 隠し通せるわけないだろ!」
椅子に座っている朱里の投げ捨てるような言葉に奈々は大声で返した。そんな朱里に祐樹は駆け寄り、下から見上げた。
「朱里さん......何があったんですか。まさか他の学校の生徒のケンカにでも巻き込まれたんですか」
「へへっ、大丈夫だよ。先生。気にしないで、何でもないよ」
朱里は無理矢理口角を上げ笑顔を作る。それで祐樹を安心させようとしているが切れた唇から流れて固まった血、頬に残る無数の赤い痣がとても痛々しい。
「大丈夫じゃねえよ。マジックにやられたんだ」
「マジックって......木崎さん?」
玲奈に消毒液を塗っていた真子が口を開き、重い口調で喋り始めた。火鍋は強がって口を割らないだろう。だったら目撃者の自分たちが言うしかない。
真子の言葉を聞き、祐樹は再び朱里を見るが朱里は目を合わせようとしなかった。
「こいつらがマジックにボコボコにされてるところを偶々見かけたんだ。私とゾンビも加勢しようと思ったところでマジックが呆れた顔してどっかいっちまった」
祐樹は杏奈の言葉を思い出す。確かゆりあは心が傷ついていたと言っていた。もしかしたらその反動で朱里達に手を出してしまったのかもしれない。あの時、自分が楽観視せず寄り添って考えていれば朱里達は怪我をしなくて済んだのかもしれない。自分のせいだ。
「助けられなかった......」
自分の不甲斐なさにする。祐樹は思わず朱里を抱きしめた。
「わ! 先生、ちょっと......!」
「ごめん......ごめんなさい......」
「な、なんで先生が謝るのさっ......んっ」
突然起きた光景に周りの真子達は思わず釘づけになった。