第二章/南那
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 あんなぶっきらぼうに当たらなくてもいいのに。素直になれない自分自身に南那は嫌気がさす。
南那は今日も、いつもと何も変わらず真子と接していた。言いたいこと聞きたいことは山程あるはず。なのに心に鍵でもかかっているかの様に言葉達は出て来てはくれなかった。南那は心のモヤモヤは増す。時間が経つにつれ自分が悪い筈なのに、このモヤモヤを真子のせいにしていた。
 そのモヤモヤが噴出してしまったのは2人が帰ろうとしていたときだ。

「南那! 久しぶりに一緒に帰れるよ」

「えっ」

 南那は驚く。今日も一人で帰ることになると思っていたからだ。真子の屈託の無い笑顔は今だけ南那の鼻についてしまった。今まで私を放っといたくせに。私の気持ちなんかしらないくせに。南那は後頭部が熱くなるのを感じた。

「いい。一人で帰るから」

「えっ……、なんで」

 あのときの自分の顔は最低な顔をしていたんだろうと南那は思う。とても冷たい表情で真子に言い放ってしまった。
 真子にとっても予想外だった。今日だって南那はいつもとなにも変わらなかった筈。なのにどうして南那はこんな表情なの?

「じゃあね」

「……ねぇ、南那。どうしたの」

「どうもしないよ。一人で帰りたいだけ」

 真子の泣きそうな声から逃げ去る様に南那は教室から出た。

 

 明日どんな顔して会ったらいい?こんなんじゃ自分の首を絞めてるだけじゃん。明日から学校休もうかな。南那は俯きながら灰色のコンクリートの上を歩いていた。





「待って! 南那!」

 

 突然聞こえた大きな声に南那の心がドクンと動いた。真子の声だというのはすぐ分かった。南那は歩く速度を速める。

「南那!」

 真子は学校から息を切らして走っていた。南那に追いつくと腕を掴み振り向かせようとする。その真子の手を振り払う様に南那は前を向きながら抵抗した。

「離して!」

「お願いだから待ってよ! 勘違いなの!」

 『勘違い』それは、みなみも言っていた言葉。その言葉に自然と足が止まった。振り向くと真子がその場に座り込んでいた。昨日の自分の様に。

「勘違いなんだよ、あれは、弟、なの……」

 

 溢れ出した涙を落としながら、真子はゆっくりと話始めた。


 

 


■筆者メッセージ
なんか色んなメンバーが出てくる話を書きたいんですよねえ。なんにも思いつかないのですがね

真島の兄さんさん
おそらくまだ黙っている選手は居るんでしょうね。表に出てないだけで実情はどうなんでしょうね
ハリー ( 2016/03/15(火) 11:14 )