第4章
03
それはほんの少し前。

昼頃のことだった。


「はい、松岡ですが。

 お世話になってます、黒賀谷さん。

 そろそろ報告に

 行こうと思っていたのですが」


柊也は自らのポケットの中で

けたたましく鳴っていた

携帯を取り出すと

通知画面を見てから電話に出た。


「そうでしたか。

 まあ、本日電話したのも

 その件についてですが。

 どうやら都内の高校に

 彼が現れたようなのですよ」


「江口公造がですか?」


「ええ、場所についてまでは

 把握できませんでした。

 それについては君の方で

 お願いします」


「はい、分かりました。

 あとは自分の方で調べてみます。

 それでは失礼します」


そう言って、柊也は電話をきると、

素早く次の行動へと移った。

自らの机の上に置いてある

手帳をとると足早に

部屋を出ようと扉を開けた。


「紗英...

 まさか話聞いてたのか?」


扉を開けた先には顔を下に向けた

紗英が立っていた。


「柊也さんが調べているのって

 もしかして...

 "アーク事件"何ですか?」


紗英は少しずつ

顔を上げながらそう言った。


「その事件、

 お兄ちゃんがいなくなる前に

 調べていた事件です」


「それは本当か?」


「はい、それにお兄ちゃん

 居なくなる前に私に

 その時使ってた手帳を

 預けていきました」


「そうだったのか。

 よし、お前も一緒に来い。

 お前の力が必要だ」


そう言うと、柊也は語尾を速めながら

紗英と共に建物を出て行った。

Joker ( 2016/03/16(水) 00:02 )