第4章
01
「下がってください、早く!」


1人の警察官がテープの前で

群がる人々に向かって

そう叫んでいる。


[いったい何人いるんだ、暇人どもめ]


警官は頭の中で

そんなことを思いながら

先ほどと同じ言葉を

再び力いっぱい叫んだ。


そんな彼の前に

人ごみの中をすり抜けるようにして

1組の男女が立つ。


「すみません、

 こういうものなのですが」


彼の前に立った2人のうちの女の方が

彼に向かって

手帳をみせながらそう言った。


彼はその手帳を見ると敬礼し、

2人をテープの内側へと入れた。


テープをくぐった2人組は

その現場の責任者を探し、

先ほどと同じように手帳を見せた。


「なぜ公安の方々が

 このような場所に?」


手帳を見た現場の責任者が

2人にそう尋ねる。


「私が追っている人物が

 これに関わっているようなので」


「そうでしたか。

 まあ、どうぞゆっくりと

 見ていってください。

 ただし、くれぐれも捜査の邪魔は

 しないように気を付けてください」


責任者の男は

納得したというように

頭を縦に振りつつも、

少しいやそうな表情を浮かべながら

そう言った。


「もちろんです。

 ありがとうございます」


2人のうちの男の方がそう答え、

責任者の男が

2人のそばから離れてから

今度は女の方が口を開いた。


「はあ。

 相変わらず

 嫌われてますね、私たち」


「まあ、しょうがないだろうね。

 公安と警察じゃあね」


「ですよね。

 ところでよかったんですか?

 私を連れてきて」


女は男の言ったことを

肯定しながらそう尋ねた。


「まあ、仕方ないだろうね。

 君もあの事件に

 関わっていたんだから」


そう言うと男はゆっくりと

校舎の中へと入っていった。

Joker ( 2016/03/12(土) 00:00 )