第3章
06
「先生、どうしたの?

 急に止まっちゃって?」


突然、言葉を詰まらせた

玄の行動を不審に思ったゆりあ。

その直後、ゆりあは

彼の目線が自らの背後へと

向けられていることに気が付き、

その方向を向こうと

身体を反転させようとした。


その時だった。


玄の声が速かったか、

それとも

大きな衝撃音の方が速かったか

2人には分からなかった。


ゆりあは背後から、

由依は正面から強い衝撃を受けて

部室の床へと倒れこんだ。


2人の頭の中に

大きな混乱が産み出された。


何が起こったかは分からない。


彼女たちは混乱の渦が

少しずつ落ち着いていく頭の中で

ゆっくりと状況を理解し始め、

2人の脳には自らの体の状態が

情報として入り始めた。


ゆりあは胸に、由依は背中に

鈍い痛みがあった。

だが、肉体を動かすのに支障はない。


そう思った2人はゆっくりと

体を起こそうとする。


しかし、なぜか

起き上がることができない。


その時、2人は自らの体の上に

誰かが覆いかぶさり、

その者の腕によって

頭部が守られていることに

初めて気が付いた。


再び2人の中に混乱が生まれ、

それが去っていくまでに

また少しの時間を

要することになった。

Joker ( 2016/02/03(水) 02:07 )