第2章
09
「ほら、起きろ。

 まったく酒に弱いのは

 相変わらずか」


柊也は目の前で寝てしまっている

紗英を起こそうとする。


昔、といっても

そんなに前のことではないが

紗英がまだ新人だった頃に

我が家でいろいろと

教えていた時もこうだった。


酒に強いわけでもないのに

無理をして俺に合わせようとする。

そうしては目の前で

いつも眠ってしまっていた。


俺は紗英を起こそうとしたが、

一度眠ってしまうと起きないことは

十分承知している。


「仕方ないか。

 これも紗英なりの

 気づかいだからな」


そう言うと俺は紗英を担ぎ上げ、

自らの寝室へと運んだ。



「さてと、どうするべきかな」


柊也は紗英を寝室へと運んだ後、

自らのPCの電源をいれ、

画面を見ながら頭を悩ませていた。


黒賀谷から依頼されてから

1週間の間に手に入れた

事件に関する資料はゼロに等しい。


当時、その事件の捜査に

関わっていた者すら

柊也は見つけることができずにいた。


今までも黒賀谷さんに

依頼された調査で

難航したものはいくつかあった。

しかし、ここまで

事件に関する情報が少ないものは

一つとしてなかった。


それほど、この事件の裏側にある

真実は重要であるということを

物語っていた。


「一度、

 黒賀谷さんに報告してみるか」


柊也はそう呟くと静かに

パソコンの画面を閉じ、

部屋の電気を消した。

Joker ( 2016/01/12(火) 23:51 )