第1章
05
「それでは、

 決まったようですね。

 ところで、

 井坂先生はこの後授業は?」


「今日は午後まで授業はありません」


「そうですか、

 それならちょうどいいですね。

 井坂先生、遥香さんを

 家まで送ってあげなさい」


「よろしいのですか?

 そんなことをしても」


「仕方ないでしょう。

 彼女は狙われています。

 彼女の安全を確保するためにも

 それが賢明な判断です」


「分かりました。

 車で彼女を送ってきます。

 それじゃあ、ついてきて」


「失礼しました...」



遥香は自らの担任である

玄とともに校長室を出た。

玄は自らの車へと向かう途中、

遥香に前を向きながら話しかける。



「まあ、いろいろと僕からも

 言いたいことはあるけど

 校長の言った通り、

 君の安全が最優先だ」


「分かっています」


「それならとりあえず今は

 ほとぼりが冷めるまで

 自宅でおとなしくしてること。

 わかったね?」


「分かりました」



うわの空で返事をしながら

遥香は前を歩く

教師のことを考えていた。



「井坂玄」

社会科教師、去年この学校に着任

辺りでも有名な

このヤンキー校をたった1年で改革

私のような落ちぶれた生徒を

見放すことは絶対にしない

そんなドラマのような

情熱をもった先生...



私は今この先生に恋をしている...

Joker ( 2015/12/10(木) 01:04 )