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番外編3
すずもんの場合3

今日は部活で学園に来ていた。
練習が終わり、制服に着替え部室を出る。


玄関にみんなで向かっていると、彼の後ろ姿が見えた。


美愉「…あ、理央?」
冬「ホントだ。…何しに来てたのかな。」
虹「もんちゃん、声掛けなくていいの?」
美愉「…え、あ…どうしよう…。」
瑞「夏休み中、会ったの渡邉君に?」
美愉「(フルフル)」
冬「ほら、行ってこい!」
美愉「うわっ!?」


私はふーちゃんに背中を押され、彼の側へ行く。


理央「あ、美愉。」
美愉「…久しぶり。」
理央「そう言えば夏休み会ってないな。部活終わったの?」
美愉「…うん。理央は?どうして学校来てるの?」
理央「ああ、ちょっと用事。」
美愉「…へえ。」


何の用事だろう…、少し気になる。


理央「…用事って何だろうって思ってるでしょ。」
美愉「…はっ!?」
理央「ゴメン、ちょっとまだ言えないんだ。」
美愉「…うん。…あの、」


思い切ってこの後の予定を聞いて出来ればデート、と思い、


美愉「…この後、時間ある?」
理央「この後、1時からバイトなんだ。」
美愉「…そう…。」


ダメか…ガッカリしていると、


理央「でも、腹減ったし、昼一緒に食べない?」
美愉「…いいの?」


彼の顔を見上げると、


理央「もちろん。じゃあ行くか。」
美愉「…うん。」


後ろではみんながニヤニヤしながら私達に手を振っていた。


学園から出ると、他愛のない世間話をしながらお店に向かう。


私達はファーストフード店で昼食を取ることに。


彼と向かい合ってハンバーガーを食べ始める。


理央「美愉の口小さいけど、ハンバーガー食べられるの?」
美愉「…食べられる。」


私が期間限定のハンバーガーを食べていたら、彼が


理央「美愉のハンバーガー、味見させてくれない?」
美愉「!!…う、うん、いいよ。」


私が彼に差し出すと、


理央「ゴメンな、いただきます。…んっ、ウマい。…あ、ゴメン。こういうのイヤだった?」
美愉「(フルフル)」


彼からハンバーガーを受け取るが、彼の口をつけたところが気になって仕方ない。


間接キスなんて考えると顔に熱が集まってくるのが分かる。


でも、出来るだけ自然に食べる事を意識して食べ進めた。


理央「ごちそうさま。」
美愉「…ごちそうさまでした。」
理央「ありがとう、美愉。昼飯付き合って貰って。」
美愉「…ううん、2人でご飯食べられて…嬉しかった。」
理央「今日の埋め合わせはするから。」
美愉「…じゃあ…今週…空いてる日…ない?」


彼にやっとそれを聞くと、スマホを確認し始める。


理央「え〜と、…明後日は何も予定はないよ。」
美愉「…明後日…私も部活ない。」
理央「じゃあ明後日で良い?」


私が頷くと、


理央「…何かしたい事とか行きたい所とかある?」
美愉「………。」


何が良いか考える。……そうだ、


美愉「…ウチに…来ない?」
理央「え?…良いの?」
美愉「…私、お菓子作り好きだから…理央に食べて…欲しくて。」
理央「…うん、分かった。それじゃあお邪魔させて貰うよ。」
美愉「…うん。待ってる。」
理央「楽しみだな〜。前に冬優花が『鈴本はお菓子作りとかめちゃ上手い』って言ってたし。」


ふーちゃん、そんな事理央に言ったの?
失敗したらどうしよう…。


美愉「…ハ、ハードル上げないで…。」
理央「あ、ゴメンな。でも、嬉しいからさ。女子に食べ物作って貰えるとか。」
美愉「…理央、料理上手だってふーちゃん言ってた。生徒会の合宿で食べたって。」
理央「ああ、うん。どっちかと言うと食べさせる側ばっかりだし…。」


ん?…ちょっと引っかかる言い方だなぁ…。


美愉「…他の子にも食べさせたりしてるの?」
理央「え?あ、あはは…。さて、帰ろうか。」


彼はごまかすように席を立ったので、彼の腕をそっと掴み、顔を見上げる。


美愉「………。」
理央「…そんな顔されたら困るな。」


再び席に着いてこちらを見る理央。


理央「…聞きたいの?」
美愉「(コク)」


今の状況を知りたくて頷いた。


理央「…前に愛佳と弁当作って出掛けたし、佑唯に料理教えた。合宿では2回食事当番やったかな。」
美愉「…ご飯作って貰った事は?」
理央「…1年の平手が手作りの弁当を何回か。3年の上村さんにも1回ご飯食べさせて貰った。後は理佐が結構弁当作るようになったかな。」


ライバルが多い…。でも、負けたくない…。


美愉「…じゃあお菓子だけじゃなくてご飯も作る。」
理央「ホント?無理しなくても…、」
美愉「…大丈夫。…楽しみにしてて?」
理央「…分かったよ。鈴本さんちの美愉さんは頑固だもんな。」
美愉「…ふふ。負けず嫌いだから、私。」
理央「明後日楽しみにしてる。…もう時間だ。送ってあげられなくてゴメンな?」
美愉「(フルフル)…デートの約束出来たから…。」


彼は申し訳なさそうに私に手を振りマーブルに向かった。


美愉「…何作ろうかな…。」


彼の胃袋を掴むため、帰り道も明後日のメニューを考えながら歩く。



そんな時、後ろから声を掛けられた。


冬「鈴本〜。」
虹「あれ、渡邉君と一緒じゃないの?」
瑞「ね、すずもん1人なの?」
美愉「…みんな…。う、うん。昼からバイトだって。」
冬「そっかー。で、どうだった久しぶりの理央は?」


ふーちゃんがニヤニヤしながら聞いてくる。


美愉「…ど、どうって…?」
瑞「どうって決まってるでしょ〜?デートの約束とか、チュウしちゃったとか〜?」
美愉「!!(フルフル)」
虹「土生ちゃん、もんちゃんの事だからチュウは絶対無理でしょ。」
美愉「(コクコク)」
冬「なら、デートの約束位は取り付けたんだろうな〜?」


みんなの視線が集まる。
どうせ隠しきれないので、


美愉「…う、うん。一応…。」
瑞「お〜やったじゃん。」
虹「どこ行くの?」
美愉「…ウチ。…ご飯とかお菓子作ろうと思って…。」
冬「なるほど〜。得意の料理で胃袋掴みに行くか〜。でも、理央も中々の腕前だからね〜。」
虹「ふーちゃんも食べたんだっけ?渡邉君の料理。」
冬「うん。鯖の味噌煮を男子高生が作るとかスゴくない?」
瑞「え〜。私なんて料理全く出来ないよ〜。」
虹「私も〜。渡邉君みたいな人と結婚しないとダメじゃない?ウチら。」


3人の話がズレ始めたが、私は明後日の事で頭がいっぱいだった。


冬「鈴本!」
美愉「えっ?何?」
瑞「全然聞いてないし〜。もうデートの事で頭がいっぱいなのかな〜?」
美愉「…う、うん。」
冬「みんな応援してるからね。…私は色んな子を応援しなきゃだけどさ。」
美愉「…(コクン)」


私は私の武器で彼と向き合う。
彼が私を選んでくれる、そう信じて。


■筆者メッセージ
ご無沙汰しています。
久々の更新ですね。

どうもhinataです。

さて、鈴本さんの番外編です。
多分3話くらいのボリュームの予定です。

またお付き合い下さい。

ではまた。
hinata ( 2018/04/10(火) 20:32 )