菅井様の場合3
ただいま理央君との待ち合わせ場所に猛スピードで向かっている。
金曜日の夜、理央君からのLINE。
理央『お疲れ様です。この間約束した日曜日の件ですが、10時に秋葉原駅で待ち合わせで良いですか?』
友香『分かりました。楽しみにしていますね。』
理央『友香さんに楽しんでいただけるよう、精一杯努めます。』
もう、相変わらずお嬢様イジリしてくるんだから…。
とはいえ、心は日曜日に向けて躍っている。
友香「何着て行こう…。」
部屋には服が並べられ、ファッションショーでも開催する勢い。
結局、自分で決められずに土生ちゃんを土曜日に自宅に呼んで相談する。
瑞「う〜ん…秋葉原でメイド喫茶デートだし、初デート…うん、これで行こう。」
友香「うん、ありがとう土生ちゃん。」
瑞「頑張ってねゆっかー。しっかり距離を近付けておいでよ。」
友香「どうだろう…、理央君はモテモテですし…。」
瑞「そんな遠慮してたら他の子に取られちゃうよ!…ゆっかーの渡邉君への想いってそんな程度なの?」
友香「土生ちゃん…。ううん、私頑張る!」
瑞「うん!ちゃんとゆっかーの好みも確認してたし、きっと良いプラン考えてるよ渡邉君。」
友香「楽しみー。」
楽しみ過ぎて、中々寝付けず明け方やっと眠りにつけた。
が、結果待ち合わせの1時間前に起きてしまい、慌てて準備してメイクが落ちる事も気にせず猛ダッシュ。
約束の時間に10分遅れ、待ち合わせ場所に辿り着く。
友香「ごめんなさい。遅れてしまって…。」
そう言って頭を下げると、
理央「大丈夫ですよ、連絡貰ってましたし。それより凄い汗ですよ、友香さん。これで拭いて下さい。それとも一度お手洗いに行きましょうか?」
ハンカチを取り出し、そう言ってくれる彼。
友香「ありがとうございます。」
彼のハンカチを借りて汗を抑える。
友香「お言葉に甘えてお手洗い行ってもよろしいですか?」
理央「はい、では入口でお待ちしています。」
駅のお手洗いに入り、髪やメイクを直したり汗を拭き取る。
友香「はあ…初めてのデートがこれじゃあ…。」
自分の至らなさでテンションが下がったまま、お手洗いを出る。
友香「お待たせしました。」
理央「いえ。…初めて私服見ましたけど、友香さんのイメージ通り清楚な感じですね。」
友香「えっ?あ、そうですか?」
理央「ええ、似合っていて可愛いです。」
良かった…土生ちゃんありがとう〜。
下がったテンションも回復し、ちょっとだけ饒舌になる。
友香「土生ちゃんに選んで貰ったんです。初デートに相応しい服が選べなくて。」
理央「土生と幼馴染だったんですよね。リサーチする相手が土生でちょうど良かったです。では、参りましょうか友香お嬢様。」
そう言って手を出す彼。
友香「もう、お嬢様扱いは結構です。」
理央「ふふ、失礼しました。」
彼の手を握り、歩き始める。
男の子と手を繋いで歩くなんて幼稚園以来…。
ドキドキし過ぎでどうして良いかわからない…。
理央「…友香さん、どうかしました?」
友香「えっ?…あ、あの大きくなってから男性と手を繋ぐ事が無かったので、緊張してしまって…。」
理央「そうですか。でも、いつもの友香さんの笑顔が見たいです、俺。」
友香「えっ?私、どんな顔してますか?」
理央「強ばってるように見えます。…無理に誘ってしまったかなって…。」
そんな事を言われて、慌てて否定する。
友香「そ、そんな事ありませんよ。楽しみにし過ぎて眠れなかったんですから。」
理央「楽しみだったって言ってもらえて良かったです。」
そう言って柔らかい笑顔を見せる彼に見惚れていると、
理央「友香さんアニメがお好きなんですよね?」
友香「は、はい。土生ちゃんの影響でハマってしまって。」
理央「メイド喫茶に行くには少し早いので、アニメイトに行きませんか?」
友香「はい。」
理央「安物ですいません。」
友香「いえ、嬉しいです。初デートの記念ですから。」
私の好きなアニメのキャラクターのキーホルダーをプレゼントされて、気分も上々。
友香『あの、お揃いにしても…。』
理央『はい、喜んで。』
同じ物を持っているというだけで彼との繋がりを感じられる。
理央「さてと、ではお目当てのメイド喫茶に行きますか。」
友香「はい。」
彼の手を握りしめ、歩き始める。
理央「…思ってたよりこっちが恥ずかしくなりますね。」
友香「そうですか?メイドさん可愛いし、とても楽しかったですよ。」
理央「友香さんが楽しかったなら良かったです。でも、まさか土生がバイトしてる店だったとは…。」
そう、入ったお店で土生ちゃんがアルバイトしていて、鉢合わせして驚いていた。
『手なんて繋いでるし…ゆっかーファイト。』
なんてこっそり声を掛けてくれた。
友香「そうですね。でもよく似合っていて可愛かったですよ。」
理央「はい、申し訳ないけど俺達に付いてくれたメイドさんより土生の方が可愛かったです。」
友香「…デートをしている相手の前で他の子の話ですか?」
ちょっとだけ不満な顔をすると、
理央「友香さんはヤキモチ焼きですね。」
友香「…こんな女子は重いですか?」
理央「全然。俺がデリカシーのない発言をしただけですから。可愛いですし、愛されてる感じがします。」
友香「もしかしてワザとですか?先ほどの発言は。」
ニコニコして答えない彼。
友香「もう…。」
理央「…友香さん、まだ時間大丈夫ですか?」
友香「は、はい大丈夫ですけど。」
理央「門限は?」
友香「9時です。」
理央「分かりました、行きましょう。」
私の手を引き、歩き出す彼。
どこに行くのだろう…。
友香「…辺り一面よく見渡せますね。」
理央「本当は夜の方が綺麗なんでしょうけど。」
友香「いえ、景色がよく見えますよ。」
彼はお台場の観覧車に連れて来てくれた。
友香「理央君は、景色見なくてよろしいのですか?」
理央「はい。友香さんが楽しんで貰えたら。」
友香「…高い所苦手なのでは?」
理央「…はい、実は。」
そう言って苦笑いする彼。
私は隣に座り、
友香「無理なさらなくて良かったのに…。」
理央「友香さんに楽しんで貰いたかったので。…まあ、お嬢様はヘリに乗ってナイトクルーズとかされてるかも知れないので大した事じゃないかも知れませんが。」
友香「したことありません、そんな事。…ありがとうございます、私のために色々考えて下さって。」
私は手を握り、彼の肩にもたれ掛かる。
理央「友香さんに手を握って貰って少し落ち着きました。」
そう言うと、握った手を強く握り返した彼。
友香「今日はありがとうございます。…とても楽しかったです。」
理央「なら良かった。」
友香「またデート、して頂けますか?」
理央「…俺で良ければ。」
友香「…理央君、好きです。」
頭を上げ、彼をジッと見つめる。
私から彼にくちづけをする。
観覧車は1番上に到着していた…。