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番外編
菅井様の場合2
木曜日。
今日は生徒会室に理央君と2人きり。


昨日は様子を見に来た?作業の邪魔をしに来た?他の生徒会メンバーがいたが、今日は部活や用事のため、誰も来ていなかった。


理央君はパソコンに向かい、集まったアンケートを見ながら報告資料を作成中。


私は明日行われる模試の勉強…は身が入らず、彼の様子をチラチラと伺う。


『生徒会でパソコン使う事も増えたので買いました。』というブルーライト用の眼鏡をかける彼。


意外と似合うし、大人っぽく見えて素敵かも…。真剣に画面に向かう表情もカッコいいし…。


ってダメダメ、模試の勉強しないと。
私は雑念を振り払い参考書に目を移す。


と、そんな時


理央「…ふう。ちょっと休憩…。あ、菅井様コーヒー飲みますか?」
友香「えっ?あ、ああ、はい、頂きます。」
理央「今淹れますね。」


生徒会室にあるコーヒーメーカー(私の私物)でコーヒーを準備する彼。


理央「このコーヒー美味しいですよね。」
友香「ええ、父が愛飲してるコーヒー豆を手作業で粉にして貰ってます。」
理央「爺やに?」
友香「まさか。専門のお店でお願いしてます。」
理央「うわっ、高級そうなのに俺凄く飲んでますけど大丈夫ですか?」
友香「気にしないで下さい。」





理央「どうぞ。」
友香「ありがとうございます。」
理央「菅井様、勉強忙しかったら帰っても良いですよ。俺1人でもちゃんとやりますし。」


コーヒーを飲みながらそう言った彼。


友香「いえ、作業の指示を出した以上、私にも監督責任がありますから。」
理央「あれ、模試はいつでしたっけ?」
友香「明日ですよ。」
理央「そうですか。…へぇ、結構難しいですね。」


参考書を覗き込む彼の顔が近い。
ドキドキしているのを悟られたくないけれど、彼の顔から目が離せないでいた。


理央「…菅井様はどこへ進学するつもりですか?」


覗き込むのをやめた彼が私に尋ねる。


友香「…へっ?あ、はい、学習院を希望しています。」
理央「そうですか。」
友香「理央君はどうされるつもりですか?」
理央「俺ですか?…将来は理学療法士だとか、スポーツ選手のリハビリ指導するトレーナーとかそういった仕事をしたいと考えています。」
友香「それであれば専門学校ですかね。」
理央「そうですね。担任の澤部先生に相談はちょくちょくしてますけど。」
友香「そのような進路を考えられたのは、やはりご自分の経験からですか?」


彼は掛けていたメガネを外し、私をジッと見る。


理央「…本当なら医者になりたいって言うべきなのかもしれないですよね。…梨加の様な人を1人でも救えるような。」
友香「理央君…。」
理央「それはやっぱり厳しいことが分かってるので。…自分の出来る事をやりたいとは思います。」


ほんの少し、彼の瞳が揺れたように見えた。
寂しそうに微笑みながら。



梨加ちゃん…ゴメン。


理央「…菅井様?」
友香「…そんな寂しい目をしないで下さい。私は笑顔の理央君が好きなんです。」


私は立ち上がり彼の腰に手を回し、抱きつく。



友香「…ごめんなさい。でも初めてなんです、異性を好きになるのは。しかも、親友の彼氏だなんて。」
理央「…俺で良いんですか?」
友香「はい。…今は理央君以外考えられません。」
理央「そう言って頂けて嬉しいですけど。」
友香「…迷惑ですか?」
理央「…迷惑な訳ないです。菅井様みたいな方に告白されて嬉しくない訳ないですよ。」
友香「…他の子の事が気にかかるのですか?」
理央「…菅井様にお叱りを受けた時の4人に告白されてます。」
友香「…ライバルがいっぱいですね。でも諦めるつもりはないですよ。彼女にしてもらいますから、必ず。」
理央「菅井様は意外に負けず嫌いですよね。見た目の穏やかさからは想像できませんでした。」


彼の腕が私の背中に回る。


友香「…嬉しいです。この間後ろから抱き締められた時、本当はもっとしていて欲しかったので。」
理央「そうだったんですか?離れてって言ったのに。」
友香「みんなの前であんな事されたら恥ずかしいに決まってます!」
理央「…なんかすいません。」


思わず大きな声で言ってしまい、彼が恐縮しているのを見て、ハッとする。


友香「あ、あの、そういう事ではなくてですね、…そうです、私の警護をすると言いながら他の子にうつつを抜かしていたので、お詫びして下さい。」
理央「結構唐突ですね。」
友香「いいんです。警護は何が起こるかわかりませんから。」
理央「そう来ますか。どのようにお詫びすれば良いですか?」


そう言った彼を見上げ、目を閉じた。


少しして、唇に柔らかい感触が。
時間にして数秒だったけれど、私にはとても長く感じた。

でも…


理央「これでよろしいですか?お嬢様。」
友香「…足りません。」
理央「え?」
友香「もっとして下さい。」


唇を突き出すようにして、キスをせがむ。


理央「…我儘なお嬢様だ。」


そう言ってキスを落とす彼。
何度か触れるだけのキスをした後、


彼の顔を見つめながら、


友香「…ファーストキスです。」
理央「本当ですか?…ところで俺、爺やに狙撃されませんよね?」
友香「されません。ここには監視カメラも盗聴器もありませんから。」
理央「調べたんですか?」
友香「父が私の動向を確認するのに何かしら仕掛けていたので、月一で調べています。」
理央「………。」


驚きを隠せない彼に、


友香「私が望んだ事ですから大丈夫です。理央君は心配性なんですね。」
理央「そりゃそうですよ。菅井様と俺は身分が違いますからね。」
友香「…その菅井様ってイヤです。」
理央「…じゃあ友香さん、で良いですか?」
友香「…2人きりの時は。」
理央「はい。」


彼の腰に回した腕に力を入れて、ぴったりと彼に密着する。



理央「…あの、友香さん。」
友香「…なんでしょう?」
理央「…力、強すぎです。俺の腰折るつもりですか?」



気を付けなきゃ…。



■筆者メッセージ
またしても番外編の更新です。
菅井様の続きです。

ぜひお読み下さい。
hinata ( 2018/02/02(金) 16:54 )