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番外編
ずみこの場合
騎馬戦の後、


佑唯「…へへ、佑唯って呼んでもらえた〜。」


ご機嫌でクラスの待機テントに戻ると、


由依「…ずーみんご機嫌だね。騎馬戦勝ったからだけじゃないよね、それ。」
佑唯「え〜そんな事ないよ。いっぱい練習したから勝てて嬉しかったもん。ゆいぽんも凄かったよ、決勝までは1回も帽子取られなかったし。」
由依「まあ、オダナナがあれだけ周り見て動いてくれればね。…それより渡邉君の事好きなの?」
佑唯「えっ!?…ははは、な、何言ってるのゆいぽん。そんなんじゃないから〜。」
由依「(嘘が下手だなぁ)…渡邉君優しいもんね。練習の時、転んだずーみんの手当テキパキしてたし、走り方も習ったんでしょ?」
佑唯「うん!膝擦りむいただけなのに、すぐ傷口水で流して、自分のタオルで止血してくれてね。走るのも凄く丁寧に教えてくれて、少し良くなったら褒めてくれるし、嬉しかった〜。」
由依「で、騎馬戦の勝利を口実に行動に移した、と。」
佑唯「うん!あ、違う、違うよ〜。…理央君に褒められるとやる気出るから…あの、その…。」
由依「…ま、良いんじゃない?…ライバルは多そうだけど。」
佑唯「…そうだよね〜。100m走ってる時、声援凄かったもんね…。」
由依「…でも理佐と愛佳が応援しながら、声援送ってる女子にガン飛ばしてたよ。」
佑唯「うん、私も見た。」


私も応援しようと思ったが、あの様子を見ては到底声を出せなかった。


おまけに騎馬戦後の行動で2人に凄まれた時はさすがに怖かった。


でも理央君が2人を制してくれて『次からも頑張ろうな、佑唯』と声を掛けてくれた。


その時の彼の優しい顔は、私を笑顔にした。


私は単純なのかもしれない。
今日までの出来事は彼にとって当たり前の行動なのかもしれない。


でも彼は、彼の振る舞いは私の心を暖かくしてくれる。


同じクラスになり、初めはルックスが好みだった事もあって興味を持ったのだけど、話をする機会が出来るとその優しい言動も、たまに出る憎まれ口も、周りにいる人達への気遣いも、私が彼を好きになる理由しか見つからなくなっていた。


由依「…ちょっと、ずーみんってば。」
佑唯「えっ?何々ゆいぽん。」
由依「話しかけてるのに何自分の世界に入ってるの?…どうせ渡邉君の事でも考えてたんでしょ。」
佑唯「うっ…。」


ゆいぽんは人の事よく見てる。
人と群れる事が好きではないけど、情に深くて困っていたりするとさりげなく手を差し伸べてくれる。


佑唯「…これから色んな事ゆいぽんに相談しても良い?」
由依「…私、そっち方面はあまり得意じゃないんだけどなぁ。」
佑唯「お願いっ!こんな事ゆいぽんにしか頼めないし…。」


手を合わせながら上目遣いでゆいぽんの顔を見つめる。


由依「…仕方ないなぁ、相方の頼みだし…。」
佑唯「ありがとう〜、ゆいぽん大好き!」
由依「ちょっとずーみん?」
佑唯「いいじゃ〜ん。」


彼女はこの手のお願いを何だかんだ受け入れてくれる。
私は彼女に抱きついて喜びを表現した。


その様子を羨ましそうに見つめるオダナナの視線は全く気にならなかった。








最終種目、リレー。


私は必死に走る。
後ろから少しずつA組が近付いてきているのを感じながら。


それでも理央君に走り方を習い、前より1.5秒以上速くなったから何とかリードを守っていた。


そのまま次の走者である尾関にバトンを渡しレーンを離れると、


理央「よく頑張ったな。思ったより詰められなかったぞ。」
佑唯「え、あ、ありがとう。理央君に走り方を教えてもらったお陰かな。」
理央「じゃあ今度、お礼して貰おうかな。」
佑唯「えっ?」
理央「はは、冗談。応援よろしくな、佑唯。」
佑唯「う、うん。頑張ってね理央君。」


ちゃんと見ててくれたんだ…。
声を掛けてくれた事に喜んでいると、


由依「お疲れ様、ずーみん。」
佑唯「ゆいぽん。」
由依「さ、渡邉君が1位で帰ってくるように応援しようか。」
佑唯「うん!」




見事1位になり、クラスメイトが理央君の所へ走っていく。


私も走り出したが、どこかを痛めたような様子で座った彼を見て足を止めた。


隣にいたゆいぽんが、


由依「渡邉君どうしたんだろ。」
佑唯「どっか痛めたのかな。」
由依「そう言えば、前に膝のケガで陸上辞めたって聞いた。」
佑唯「私、保健委員で救護班だからあっちで準備してくる。」
由依「そうだね、その方が良いかも。」
佑唯「行ってくる。」



保健の新内先生に言って、氷嚢などを準備していると理佐達に肩を借りてテントに来た理央君。


佑唯「理央君、そこに座って。取りあえず冷やすから。」
理央「ありがとう佑唯。」
佑唯「新内先生、後はどうしたら良いですか?」
眞衣「暫く冷やしたら、ここで処置するとしたら湿布貼るくらいかな。渡邉君、後でちゃんと専門の所で診てもらいなさいよ。」
理央「はい。理佐、愛佳、閉会式もあるから戻って良いよ。俺はここで参加になると思うし。」


そう言うと2人は戻って行った。


佑唯「大丈夫?」
理央「痛いけど、まあ勝ったから良しとするかな。」
佑唯「最後凄かった。カッコ良かったよ理央君。」
理央「そう?それにしてもいつこっちに来たの?」
眞衣「血相変えて走って来たわよ今泉さん。渡邉君どこか痛めたみたいだって。」
佑唯「新内先生、ちょっと。」
眞衣「若いって良いわね〜。」


先生がニヤニヤしながらそう言うと、顔が熱くなる感覚に襲われる。


理央「そうか、…良い奴だな佑唯って。」
佑唯「そ、そうかな〜。」
理央「正直おバカちゃんキャラだと思ってたからさ。」
佑唯「え〜理央君、ヒドくない?」


そう言って口を尖らせる。


理央「傷付いた?」
佑唯「傷付いた〜。」
理央「ゴメンな。でもさ、佑唯の笑顔って太陽みたいだよな。みんなを明るくするって言うか、こっちも笑顔になるし。」
佑唯「ホント?」
理央「うん、ホント。いい笑顔だと思う。」


そう言われて頬が緩むのが分かってしまう自分はやっぱり単純なのだろう。


眞衣「渡邉君はタラシだね〜。そんな事言われたらみんな落ちちゃうよ、きっと。ね、今泉さん?」
佑唯「えっ?あ、いや…嬉しかったです。」


彼の言葉が頭の中をリフレインしていた。




■筆者メッセージ
『きらきら』完結してしまいましたね。最近のカオスストーリーでは驚異的な更新速度、展開も面白かったので残念ですが棚加さんが再び作品を上げてくれるのを楽しみにしたいと思います。

どうもhinataです。

さて、番外編2つ目。
自分が単に今泉さんがお気に入りだというだけで作りました。

また彼女がけやかけでゲラ泉を見せてくれるのを楽しみにしてます。


ぼちぼち更新しますので、引き続きお付き合い下さい。

ではまた。
hinata ( 2018/01/28(日) 20:43 )