第5話
今日はついに体育祭。
すでにいくつかの種目は終わり、我がクラスの得点は現在2位。団体種目は玉入れがすでに終わった。
玉入れは練習の成果を存分に発揮し、圧倒的な強さでトップを取ったが、個人種目でA組に負けたものが多く、僅かにリードを許している。
俺もすでに個人種目の100mに参加しその組の1位になった。
彼女達からの声援はそれはもうありがたいくらい頂きました。
あのザ・クールの2人があんな大きな声を出すなんてと、周りが驚くほどだった。
生徒会の1年生コンビも一緒に応援してくれて良い後輩を持ったと思っていたら、理佐・愛佳コンビに問い詰められてビビっている姿があった。
理央「後輩が純粋に応援してくれただけなんだから、そんな顔するな。怖がってるだろ、ザ・クールのおふたりさん。…でも応援ありがとな、理佐、愛佳。」
理佐「まあ、理央がそう言うなら…。」
愛「そうだね…。」
理央「葵ちゃんと優佳ちゃんも応援してくれてありがとう。」
葵「理央先輩カッコよかったです。ねー影ちゃん。」
優「うん、速いですね足。凄かったです。」
理央「そう?2人も頑張ってね。」
「「はい!」」
2人が離れて行くと、
理佐「随分懐いてるね、あの子達。」
愛「生徒会で甘やかしてるんでしょ、どうせ。」
理央「まあ、妹みたいで可愛いと思ってるのは確かだけど。」
理佐「…絶対手出しちゃダメだからね。」
愛「…特に葵は犯罪だよ。」
理央「犯罪かどうかはともかく出さないわ。さ、次の種目に出るクラスメイト応援しようぜ。」
愛「理央、本部テント戻るんじゃないの?」
理央「あ、忘れてた。俺戻るわ。え〜と、次合流するのは騎馬戦だな。2人ともケガだけはするなよ。」
愛「私は大丈夫。」
理佐「理央も、膝気を付けてね。」
理央「ああ、サンキュ。じゃ。」
そして騎馬戦。
ウチのクラスの騎乗者は、茜、理佐、小林、鈴本、今泉の5人だ。
作戦は小柄な鈴本、今泉の両騎が陽動で動き回り、スキをついて残りの3騎が攻める。
今のところ作戦が上手くハマり全勝で最終戦を迎えた。
相手はA組、向こうも負けなしでこの試合を迎えた。
取って取られての互角の展開だったが、最後は茜、理佐の両騎が相手の二枚看板、加藤史帆、渡邉美穂を何とか制し、この競技の勝利を勝ち取った。
俺は理佐の騎馬に入っていたが、勝利を決めると降ろした理佐に抱きつかれ、一緒に騎馬に入っていた愛佳にも抱きつかれる。
そこまではまあわかるが、2人が落ち着いて離れると、
佑唯「理央くーん!」
理央「えっ?今泉?」
俺の背中に飛び付いてきた今泉。
佑唯「ねえ、私も頑張ったよー。褒めてー。」
顔をぐっと近付けて、そう言う彼女。
そして背中には柔らかい感触も…。愛佳の言う通りだな…、じゃなくて
理央「お、おう。頑張ってたよな今泉も。お疲れ。」
佑唯「今泉じゃなくて佑唯。」
理央「は?」
佑唯「佑唯って呼んで。」
凄い期待に満ちた目で見てくる。
理央「…佑唯。」
佑唯「はいっ!」
理央「…という事でもう降りようか。」
佑唯「えー、何でー?」
どうやら彼女は俺の周りのピリついた空気を感じないらしい。
理佐「…ずみこ、何してるの?」
愛佳「…いい度胸してるね、今泉〜。」
ザ・クールに凄まれる佑唯。
佑唯「…ははは…、」
由依「…ずーみん、ご愁傷様。」
佑唯「…理央君、助けてー!」
理央「おい、苦しいって!」
首に巻きつけた腕に更に力が入って、密着してくる。
理央「分かったから、腕を緩めろって。理佐、愛佳、一回ストップ、ストップな。窒息死する、このままじゃ。」
そう言って2人を制し、佑唯をやっと降ろす。
理央「で、どうしたんだよ突然?」
佑唯「えー、理佐と愛佳が楽しそうだったから、私もやってみたくてー。」
理央「…なるほど。うん、よく分かった。次からも頑張ろうな佑唯。」
佑唯「うん!」
肩に手を置いて励ましの言葉を掛けると満面の笑みで元気に返事をした彼女。
この子の笑顔は場を明るくするいい笑顔だと思った。
そしてすぐに理佐達の所に行き、小声で話す。
理央「…もしかして、あの子おバカちゃん?」
理佐「…うん。結構な。」
愛佳「…割とおバカ発言するね。」
理央「…悪気無さそうだから許してやってくれない?」
理佐「…まあ、良いけど。」
愛佳「…私も良いよ。その代わり理央に1つ貸しね。」
理央「…まあ、分かった。」
天真爛漫…まさに彼女の為にある言葉だと思った体育祭のひと時だった。