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第2章
第6話

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理央「…それで陸上も辞めて。…今でも思うんです。勝負の世界にたらればはないですけど、ケガなく走ったら彼女は生きていたんじゃないかって…。彼女の両親は『理央君のおかげであの子は生きる希望を持ってくれた。本当にありがとう』って何度も言ってくれましたけど、本当にそうなのかなって
……っ痛え!?」


俺は美彩さんに思い切り頬を叩かれた。


美「…『私も最期まで諦めない』って彼女言ったんじゃないの?ご両親の言う通りじゃない!理央の側にいたいから、…生きたいから彼女必死に病気と闘ったんじゃない。今生きてるあんたがそんな事言ったら、彼女浮かばれないでしょ!」


涙をポロポロ零しながら強い口調で告げる美彩さん。


理央「………。」
莉「…理央、よく立ち直ったね。偉いぞ。」


そう言って、荒っぽく頭を撫でる莉菜さん。
彼女の目にも涙が浮かんでいた。


理央「…美彩さん、すいません。ありがとうございます。…そう言って貰えて少し楽になりました。…莉菜さん、立ち直れたのは2人のおかげでもありますよ。…2人が明るく、優しく接してくれてたから。だから感謝しかないです。」


美彩さんが涙を拭いた後、


美「…彼女のご両親とは会ってるの?」
理央「…毎月、月命日に。平日は行けないので近い休みにいつも行ってます。『梨加の分まで幸せになってね。気にしないで恋しなさい。』って言われてます。」
美「いいご両親ね。」
理央「…本当の息子みたいに接してくれます。両親がああいう方だから、彼女みたいな娘が育ったんだろうなって。」
莉「去年、ゆっかーも元気がない時期あったのは彼女が亡くなった頃なんだね。」
理央「…彼女の葬儀の事、ほとんど覚えてないんです。誰が来て、誰が彼女の友達なのかそれすらも。」
美「憔悴しきってたんでしょう?」
理央「…理佐に支えられてなんとかその場にいたので。」
莉「この事知ってるのは?」
理央「…両親、理佐、愛佳、それと会長くらいです。」
莉「平手ちゃんだけ知らないんだね。」
美「平手ちゃんにもいつか話すの?」
理央「友梨奈が聞きたいなら話しますけど、自分からは話さないと思います。…結構キツいので。」









理央「今日は色々すいません。」
美「イイわよ、全然。明日からも頼むわよ2人とも。」
莉「は〜い。」
理央「これからもお世話になります。」
美「は〜い、お疲れ様〜。理央、莉菜ちゃんの事ちゃんと送るのよ〜。」
理央「分かってます。お疲れ様でした。」
莉「お疲れ様でした〜。さ、行くよ〜理央。」
理央「ちょっと、引っ張らないで下さいよ莉菜さん。」







莉「理央は結局どうするの〜?」
理央「…まだわからないです。」
莉「…そう言えばさ、理佐ちゃんとは姉弟の関係だけ?」


少し前を歩いていた莉菜さんが、振り返りとんでもない質問を俺に振る。


理央「…どうしてですか?」
莉「あの子の理央を見ている時の顔は、どう見ても好きな人を見てる時の顔だし。理央も家族愛だけで優しいとは思えないし。」


何だろうこの人。恋愛マスター?下手な嘘はバレそうな気がするが、カラダの関係がある事は言えないし…、


理央「まあ、理佐の事大好きなんで、俺。」
莉「へえ〜。まさか家でヤラシイ事してたり〜。」
理央「ち、ちょっとジョーダンやめて下さ…莉菜さん危ない!」
莉「えっ、キャッ!?」


莉菜さんが後ろ向きで歩いていたので、こちらに向かって来た自転車にぶつかりそうだったので、腕を引き俺の方へ抱き寄せた。


『気を付けろよな』という表情でこちらを見て走り去るサラリーマン。


理央「莉菜さんすいません、急に引っ張って。自転車来てたんで。」
莉菜「…うん。」
理央「腕痛くないっすか?大丈夫ですか?」


莉菜さんは首を振るだけの返事をする。
でも、莉菜さんは俺から離れない。
それどころか莉菜さんの腕が俺の腰に回って、さらに密着してきた。


理央「…莉菜さん?」
莉「…少しこのまま。」
理央「はい。」


俺は莉菜さんが離れるまで頭を撫でる。


腕が腰から離れたので、俺も頭を撫でるのを止めると、莉菜さんの右手が俺の後頭部に回り莉菜さんの方へ引き寄せられる。


そして莉菜さんも背伸びをして俺にキスをした。唇が離れ、莉菜さんの顔を見ると、いつもの彼女とは違うものだった。


莉「…ありがとう、さっきは。」
理央「…莉菜さん。」
莉「…その顔で優しくて、オマケにさっきみたいな事されたら誰でも好きになるよ。凄くキュンキュンしちゃった。」


はにかみながらそう言った莉菜さん。


理央「…俺は、その、」
莉「大丈夫。吊り橋効果だから、明日冷静になったらいつも通りになるから、ね?」
理央「…そうですか?」
莉「…多分ね。でも今なら理央に抱かれてもいいかなって思ったけどね〜。」


ちょっとおどけてみせる莉菜さんが、とても可愛らしく、愛おしく感じてしまい、思わず抱きしめてしまう。


莉「…理央。…そんな事されたら諦められなくなるよ。…吊り橋効果だって思うようにしてるのに。」
理央「…可愛すぎるんですよ、莉菜さんが。…ちょっと我慢できなかったです。」
莉「…もう、私の可愛さが罪なのか。なら仕方ないね、…もう少しこのままでもいい?」
理央「…はい。」




しばらくの間、俺達は抱き合っていた…。



■筆者メッセージ
これで第2章は終わりです。
こんな展開にしてしまいました。


どうもhinataです。


紅白の時、倒れてしまった事への様々な反応が世間にありますが、あの際にお姉さん組の対応は普段ポンコツと言われていても、さすがと思ってしまいました。

さて、過去編が終わりましたので、新たな章に入ります。
引き続きご贔屓を。

ではまた。
hinata ( 2018/01/18(木) 19:46 )