第4話
退院の前日、リハビリの後に彼女と一緒に初めて会った中庭へ。
ベンチに2人腰掛ける。
梨加「…明日…退院だね。…おめでとう。」
理央「…ありがとう。でも、退院した後も平日は毎日リハビリに通うから。」
梨加「…そっか、また会えるんだね。」
理央「…梨加さん、話したい事があるんだ。」
彼女の目を見ながら、そう告げた。
梨加「…何?」
理央「…俺、梨加さんが好きです。俺と付き合ってもらえませんか?」
梨加「………。」
驚きの表情を見せる彼女。
そしてしばらく無言の時が過ぎて、彼女が口を開く。
梨加「………私も…理央君のこと…好き。…でも…付き合えない。」
理央「…どうして?」
梨加「…病気…治らない…から。…いつか…動けなくなって…息ができなくなる…病気。」
考えてみれば、彼女は決して早い動きをする事もなかったし、息が上がるような行為もしなかった。
梨加「…すぐにいなくなる…から…私…だから…付き合えない。」
目を真っ赤にしながらそう言う彼女。
俺も、彼女の病状を聞かされ涙が出そうになるのをこらえて、話しかける。
理央「今の時代、もしかしたら新しい治療法が見つかるかも知れないし、新薬が開発されるかも知れないよ。」
梨加「………。」
理央「俺が入院してから、キツいリハビリを頑張れたのも梨加さんがいたからだった。今度は俺も梨加さんを支えたい。」
梨加「………。」
理央「言ってくれたよね、俺が走るところ見たいって。梨加さんが生きたいと思う理由にならない?元気になって、応援したいって思ってくれない?」
梨加「…理央君に…私は…必要…かな?」
理央「必要だよ。梨加さんがそばにいてほしい。」
梨加「…病気になった頃…学校の友達…お見舞いにいっぱい来てくれた…でも…いつからか来てくれるのは…本当に仲良くしてた1人だけ…だった。…私…いらないのかなって…。」
涙をこぼしながら、話してくれた彼女。
理央「でも、その親友は来て励ましてくれているんでしょ?」
彼女は小さく頷いた。
俺は彼女を抱きしめて、
理央「梨加さんはその親友が悲しむ事を望む?そんな事ないよね、梨加さん優しいから。だったら何とか病気治そう、そう思って毎日を過ごそうよ。俺もいるから。」
そう言うと、彼女の腕も俺の背中に回り、
梨加「…私も…人を好きになって…いいかな。」
理央「…うん、もう一度言います。梨加さん、好きです。俺と付き合って下さい。」
梨加「…はい。」
しばらくして、そっと離れる。
すると彼女が、頬を赤く染めながら、
梨加「…梨加さん、じゃなくて…梨加。」
理央「分かったよ、梨加。じゃあ俺も理央ね。」
梨加「…理央。……大好き。」
微笑みながらそう言った彼女は何よりも美しかった。
担当の看護師さんに見られていて、冷やかされたのはその後のお話。