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番外編4
菅井様の場合7
木曜日、約束通り理央とのデート。
学園の玄関で彼を待っている。


瑞「あれ〜ゆっかー。」
友香「あ、土生ちゃん。」
瑞「誰か待ってるの…あ、渡邉君か〜。」
友香「ちょっと土生ちゃん〜、声が大きいよ〜。」
瑞「ゴメンゴメン。で、デート?」
友香「う、うん。まあ。」
瑞「そっか〜、頑張ってね〜。」
友香「土生ちゃん、今日部活は?」
瑞「休みなんだ〜。それで、」
美波「土生ちゃ〜ん。」


小池のみいちゃんが小走りでやって来た。


美波「お待たせ〜。あ、会長さんこんにちは〜。」
友香「ごきげんよう。」
瑞「これからみいちゃんとデートするんだ〜。」
友香「そうなんだ〜。楽しんで来てね。」
瑞「ゆっかーもね。じゃあ。」


手を振りながら、2人が先に玄関を出る。


5分ほどして、彼が現れる。



理央「お待たせしました。」
友香「理央。いえ、全然。…ん?」


理央と話していると、視線を感じる。
彼の後ろから私達を見ている複数の視線。


よく見てみると、ザ・クールの2人とゆいちゃんずの2人だ。

私は彼に近づき、小声で話す。


友香「…ちょっと理央。」
理央「…はい。」
友香「…あれはどういう事?」


視線を彼の後ろに向けると、少し困った様な表情を見せ、


理央「…帰り際、冬優花が口を滑らしまして。」
友香「…そういう事。まさかついてこないよね?」
理央「…大丈夫って俺も言いたいけど、だいぶブーブー言ってたから…そうだ、………。」


彼が小さな声でこの状況を打開する作戦を告げる。


友香「…仕方ないね、うん。ちょっと待ってね。」


私はスマホを取り出して連絡を取る。

すぐに返事が来て、


友香「…5分後に。」
理央「…オッケー。」


私達は何気なく靴を履き替え、世間話をしながら玄関を出る。


彼女達も少し離れてついてくる。


ゆっくりと時間をかけて校門前まで来ると、


『お嬢様』


菅井家の運転手、岩井さんがドアを開けて待っていた。


友香「ありがとう。急でごめんなさい。」
「いえ。お乗り下さい。」
友香「理央も乗って。」
理央「はい。」


素早く車に乗り込み、走り出す。


彼女達は車を見送るしかなかったようだ。


友香「…これで落ち着いてデートできるね。」
理央「うん。ゴメンね、こんな事になって。」
友香「気にしないで。あ、岩井さんお父様にはくれぐれも内密で。」
「分かっております。ご心配なく。どちらにお送りすれば?」
理央「池袋のサンシャイン水族館へお願いします。」
「かしこまりました。」








友香「ふんふ〜ん。」
理央「ご機嫌だね。」
友香「だって久しぶりのデートだし。楽しみだったんだから。」
理央「そっか。じゃあ入ろう。」


手を繋いで水族館に入る。
平日だけど、結構お客さんも多い。


ゆっくりと見学をしていると、ある展示スペースで見た事のある後ろ姿と声が聞こえる。


瑞「みいちゃん、本気?」
美波「本気やで。土生ちゃんも付き合ってくれるって言うたやろ?」
瑞「う、うん。」
美波「じゃあ土生ちゃん、お願い。」
瑞「ねえ、見て。キレイだね〜イワシ。」


暫くの間じっくりとイワシの群れを見続ける2人。

みいちゃんが土生ちゃんをチラチラと見ている。


美波「い〜や、クリオネの尺!!」
瑞「そうかな?あれ、見て見て。珍しいのがいるよ。」
美波「えっ、どれどれ?」
瑞「あれだよあれ。ほら、…アジ。」
美波「い〜や、マナフィのボルテージ!!」


その様子を2人で見ていたが、


理央「…あれって、芸人のネタじゃない?」
友香「そうなの?」
理央「うん、テレビで見た事ある。ちょっと行ってみる?」
友香「土生ちゃん困った顔してるしね。」


2人に近づき、声を掛けた。


友香「土生ちゃん?」
瑞「あ、ゆっかー?何だ〜ここでデートだったんだ〜。」
友香「ええ、まあ。」
理央「小池、それってえ〜と、あ、東京ホテイソンのネタでしょ?」
美波「えっ!?渡邉君知ってるん?」
理央「ああ、見た事ある。小池お笑い好きだったんだな。」
美波「せやで。ウチ、将来新喜劇の舞台に立つのが夢なんよ。せやから少しでも出来ることやっておこう思って。」
理央「なるほどね。」
美波「あ、会長さん。ちょっと渡邉君貸して下さい。土生ちゃんこのネタ知らんみたいやから、間がちょっと短いんです。」
友香「え?ま、まあ良いですけど。」
瑞「助かった〜。渡邉君お願いね?」






15分ほど水槽の前でネタの練習をした2人。
私は土生ちゃんとその様子を見ていた。

何だかおかしなデートになってしまった。



終わると、満足した様子でみいちゃんは土生ちゃんと帰って行った。


「来年の学園祭はウチと漫才せん?」などと理央は誘われていたが…。


理央「ゴメン、お待たせ。」
友香「ううん。」
理央「まさかこんな所でお笑いのネタやるとは思わなかった。」
友香「本当。でも面白かった。さすがに声を出して笑うわけにいかないから我慢したけど。」
理央「そう?じゃあ来年、ホントにやろうかな。」
友香「…そうやってまた違う女の子と2人で過ごす時間作るの?」


ちょっと頬を膨らませて言ってみる。


理央「あ、そうだよね。うん、小池にはオダナナを相方にして貰おう。と言うことで、友香もそんな顔しない。ま、そんな顔でも可愛いけどね。」


そう言って私の頬を両手で挟み息を抜く。
多分ブサイクになっているに違いない。


友香「う〜。」
理央「あはは、ゴメンね。さてもう少し見て回ったらご飯に行こう?」
友香「う、うん。」





30分後、一回りして水族館を出た。


友香「水族館なんて久しぶりだったけど、楽しかったね。」
理央「うん、キレイだった〜…イワシ。」
友香「い〜や、クリオネのボルテージ!あ、間違えた。」
理央「ははは、友香も気に入った?」
友香「ちょっとテンション上がって…。」


そう言って頬を両手で抑えると、彼が頭を撫でてくれて、


理央「カワイイよ友香。」
友香「理央…。」


暫く頭を撫でてくれた後、


理央「さてと、ご飯にしようか。何にする?」
友香「えっと、行きたい所があるの。」
理央「じゃあそこに行こうか。」








理央「………。」
友香「ん〜美味しい〜。あれ?理央食べないの?」
理央「いや、食べるよ。食べるけど…、俺の倍のステーキって…。」
友香「はっ!?」


い○なりステーキで400gのステーキを食べてしまい、200gを頼んだ理央に苦笑いされてしまった。



友香「だって〜食べたかったんだもん。」


■筆者メッセージ
菅井さんのデートの話、本編で触れそこねたので番外編にしました。

この後は暫く本編が進む予定です。

引き続きお付き合い下さい。
hinata ( 2018/08/04(土) 20:39 )