第1話
夏休み明けの初登校日。
理佐と愛佳、3人で歩いているが、いつもと違う。
ひとつは、愛佳が腕を組んだりくっついて来ない事。
もうひとつは、理佐が俺の隣を歩いていない事。
理央「2人ともどうしたの?」
愛「何が?」
理央「いや、夏休み前と違うな〜って思ったから。」
愛「…昨日の今日だし、そりゃ違うに決まってんじゃん。」
理佐「…家に帰ってからだって理央と話はいくらでも出来るから。」
理央「まあそうだけど。…ま、2人が優しい顔してるから俺はそれで構わないよ。」
「「………。」」
理央「何て言うか、ほら美人てなんとなくキツく見られがちだからさ、それにあんまり見せないけど心の優しい2人がそういう表情してるの俺は結構好きだし。」
理佐「…何さらっとそういう事言ってんの?」
愛「…ばーか、照れるでしょ?」
2人が頬を染めるのを見て俺も笑みがこぼれた。
理央「2人の可愛いところ頂いたんで、さ、学校に行くか。」
理佐「うん。」
愛「うん。あ、そういえばあの2人来ないね。」
いつもならそろそろ現れるはずの莉菜さんと友梨奈。
理央「そうだな。どうかしたのかな?」
しばらく歩くと、その2人の姿が見えた。
莉菜「理央、おはよう。」
友梨奈「おはようございます。」
理央「おはようございます。どうしたんですか?2人してここで。」
莉菜「今日、バイトだよね?」
理央「はい。」
友梨「帰りに少し時間ありますか?」
理央「え?いや、いつも通り2人もバイトなら家まで送るつもりだったけど。」
莉菜「じゃあその時に。」
友梨「理佐さん、愛佳さん、理央さんお借りしますね?」
愛「いいんじゃない?ね、理佐。」
理佐「うん。」
この後4人で登校するが、やはり微妙な距離感があって違和感しかなかった。
でも、みんな穏やかな表情をしている。
美彩さんの言葉は魔法の言葉なのかな…。
教室に入ると、
奈「渡邉君おはよう。」
ね「おはよう〜。」
理央「ああ、よねさん、ねるおはよう。」
奈「昨日はホントに良かったん?ご馳走になって。」
理央「もちろん。昨日はありがとう。」
ね「ねえ、昨日何があったと?」
愛「よねに宿題の手伝いしてもらったんだ。よね、ありがとう。」
奈「そんなん気にせんでエエよ。」
理央「本当はねるに頼もうかと思ったんだけど、昨日は用事あるって聞いてたし。」
理佐「…やっぱりねるに頼むつもりだったんだ。」
愛「…私の言った通りじゃん。」
2人からジト目で見られる。
理央「頼みやすい人に頼むのは当たり前だと思うけど。とりあえず宿題は無事に終わったし、愛佳も理佐もこの話はお終い。」
そう言って席に座る。
すると悠が後ろを向いて、
悠「理央おはよう。久しぶり。」
理央「おはよう。どう?美穂ちゃんとは上手くやってる?」
悠「心配されるまでもねーよ。合宿も男女同じ所だったし、共有する時間があると絆が深まるよな。」
理央「へえ〜言うね、悠君。ま、順調そうで何より。」
悠「お前は相変わらずみたいだけどな。」
理央「ご心配をお掛けしております。」
悠「どこの政治家だよ、お前は。」
そう言ってお互いに笑い合う。
そこに、
美愉「…理央、おはよう。吉沢君も。」
悠「俺はついでかよ。」
理央「はは、おはよう美愉。」
美愉「…夏休みの約束。」
理央「ああ、アレね。」
美愉「…明日でも良い?」
理央「うん、じゃあ用意しておくな。」
美愉「…楽しみにしてて?」
理央「もちろん。スゲー楽しみにしてる。」
美愉「…またハードル上げるの?」
理央「はは、そんな事ないよ。負けないように俺も頑張らないと。」
美愉「…私も楽しみにしてる。じゃあ。」
理央「うん。」
そう言うと席に戻る美愉。
悠「何の約束だよ、理央。」
理央「うん、まあ。」
悠「いつの間にそんな仲良くなったんだ?鈴本と。」
理央「夏休み前からかな。」
悠「ま、刺されないようにな。」
理央「笑えない冗談を言うなよ。」
悠「だってよ、お前が鈴本と話している間、色んなところから視線が集まってたぞ。」
理央「そうだった?」
悠が「理佐に愛佳、長濱に今泉も見てたし、教室の外から何人か覗いてたぞ。特に今泉なんか食い入るように見てたぞ。俺がジッと見てても視線外さないくらいに。」
理央「…気を付けます。」
多分廊下から見てたのは、莉菜さん友梨奈辺りだとは思うけど、他の学年が2年の階でウロウロして目立つだろうに。
その頃廊下では、
友梨「小坂ちゃんは理央さんの事どう思ってるの?」
奈緒「う〜ん、今のところは優しいお兄ちゃんみたいな感じかな?」
友梨「…ふ〜ん。」
莉菜「ゆっかーも理央にお熱だね?」
友香「莉菜ちゃんだって。」
莉菜「ま、お互い頑張ろっか。」
友香「そうですね。」