第26話
翌日。
只今スーパーマーケットの前で待ち合わせ中です。
飛鳥姉さんの家で、打ち上げをするための買い出し。
飛鳥姉さんより『家を片付けておくから3人で買い物して来て』との業務連絡があったのでLINEのグループで時間を決めたのだが、
理央「…来ない。」
LINEを開いて時間を確認したが、間違いない。先ほどLINEを送ったが既読にもならない。
もう約束の時間から15分を過ぎている。
2人に何かあったのだろうか?
少し不安になってくる。
もう一度連絡しようとスマホを開くと、
遠くからスゴい勢いで走ってくる自転車が見えた。
キーッ!!
目の前でブレーキをかけて止まる2台の自転車。
佑唯「お、お待たせ、はぁはぁ、」
由依「はぁはぁ、遅れてゴメンね?」
理央「お、おはよう。2人とも。…あの、どうしたの?」
まだ息の整わない2人。
暫くしてやっと落ち着いてくると、
由依「…着る服に悩んでて、家を出るのが遅くなっちゃって…。」
佑唯「…楽しみにし過ぎて、4時に目が覚めて、二度寝しちゃって…。」
申し訳なさそうに話す2人に、
理央「でも、事故とかに巻き込まれてなくて良かった。連絡入れても反応ないし、心配になってたから。」
佑唯「ゴメンなさい、心配かけて。」
由依「うん、渡邉君ゴメン。」
理央「何ともなかったから気にしないで。取りあえず自転車置場に行こうか。」
「「うん」」
自転車を置いて店に入る時に、
理央「…あの、さ。」
佑唯「ん?何、理央君。」
由依「?」
理央「…言いにくいんだけど、…2人ともおでこ全開で前髪がスゴい事に…、」
そう言った瞬間に、慌てて確認する2人。
由依「ちょっと、もっと早く言ってよ。」
佑唯「そうだそうだ〜。せっかく理央君と会う日なのに〜。」
理央「ゴメン。」
少しの間髪を直し、俺を見た2人。
佑唯「どう?」
由依「ちゃんと直った、かな?」
理央「うん、バッチリ。いつも通り可愛い。」
佑唯「へへ、ありがとう。」
由依「…ね、服もどう?」
そう言ってクルッと回る由依。
理央「似合ってる。ぽんはオシャレだな。」
由依「ふふ、ありがとう。…悩んだ甲斐がある…かも。」
そう言うと、隣の佑唯が頬を膨らます。
佑唯「どうせ、ゆいぽんの方がオシャレだもん…。」
理央「そんな顔しない。佑唯も良く似合ってるよ?」
頭に手を乗せる。
佑唯「うん!」
由依「…私も。」
そう言って頭を出してくる由依。
理央「はい。これで良い?」
由依「ふふ…嬉しい。」
理央「さ、買い物しちゃおうか。」
佑唯「うん、で、何作るの?」
理央「ご所望のパンケーキと、パスタ、サラダと肉料理を作ろうかなって。」
由依「肉料理って?」
理央「何にするかは食材と相談かな?」
買い物中、余計な物を買おうとする佑唯。そして、それをたしなめる由依。
…なんか買い物に来てはしゃぐ子どもと母親みたい…とは口に出して言えなかった。
飛鳥「いらっしゃい。遅かったんじゃない?…2人とも理央とのデート気分で買い物楽しんでたんじゃないだろうな?」
佑唯「いや〜あの、実は…、」
由依「…2人とも待ち合わせの時間に遅れてしまって…、」
「「ゴメンなさい」」
飛鳥「ふ〜ん、なんだ。取りあえず上がって。後は理央にお任せで。」
理央「了解です。」
料理は順調に進む。
それも由依の手伝いもあっての事だが。
うん、手際が良くて頼りになる。
一方、他の2人は…。
佑唯「飛鳥さん、本ばっかり読まないで下さいよ〜。おしゃべりしましょうよ〜。」
飛鳥「ん〜?私、家ではこうだから。」
佑唯「え〜。」
読書に耽る姉さんに相手をしてもらえず、口を尖らせる佑唯。
少し可哀想だったので、
理央「佑唯〜、ちょっとこれ味見して〜。」
佑唯「あ、味見?はいは〜い。」
台所にやって来た彼女に、とりつくねの梅肉和えを4分の1にカットした物を佑唯の口に入れる。
佑唯「うわ〜美味しい〜。」
理央「そう?良かった。ぽんも口開けて。」
由依「う、うん。…梅が良いアクセントになってるね。」
理央「まだ暑いから夏バテ防止も兼ねて。」
そんな話をしていると、リビングから視線を感じる。
飛鳥「………。」
後が大変、そう思った俺は皿を持って姉さんに近付く。
理央「結構自信作なんだ、食べて?」
飛鳥「仕方ない、味見してやる。」
そう言って口を開ける姉さんに、
理央「はい、どうぞ。」
飛鳥「ん〜、んん、美味しい…。」
理央「飛鳥姉さんからもお墨付き頂きました〜。…姉さん、懐いてくれる後輩にもう少し配慮。」
飛鳥「…ん、分かった。仕方ない、おーいずーみん、おいで〜。」
佑唯「は、はい!」
本に栞を挟み、佑唯と話を始めた。
由依「…飛鳥さんの扱い手馴れてるね。」
理央「まあ、小さい頃からの付き合いだし。コミュニケーションの取り方が人と違うだけだから。」
由依「…何か妬ける。」
理央「ん?」
リビングの2人に見えない位置で俺の手を握る由依。
耳元に口を寄せ、
由依「…私の事ももっと知って欲しいな?」
理央「…由依。」
頬を染めた由依がとても可愛い。
理央「…今度、どっか行く?」
由依「…うん。楽しみにしてる。」
笑顔を見せる彼女から目を離さずにいると、
飛鳥「…何見つめあってるの?」
佑唯「あ〜、ちょっと良い雰囲気になってる!ズルいぞゆいぽん!」
由依「ふふ、渡邉君の手伝いしてる特権だもん。女子力って大事だよね。」
「「う…。」」
可愛い顔して中々の言葉を発するよな由依って、そんな事思いながら料理を完成させた。
由依「渡邉君、あーんして。」
飛鳥「…私もやってやる。」
佑唯「そういうのは私がやるー!」
打ち上げは、美少女3人に囲まれ…楽しい…ひとときを過ごしました。
理央「く、苦しい…。」