理央「お疲れ様〜。」
佑唯「あ、理央君。」
由依「準備終わったの？」
理央「ああ、バッチリ。明日、パンケーキの準備でまた早く集合だけどな。」
飛鳥「理央のクラスはメイドと男装だっけ？」
理央「そう。ゆいちゃんずはメイドさん。俺はキッチンでパンケーキ担当。」
飛鳥「へえ、明日行くからパンケーキ食べさせて。」
理央「お待ちしております、お嬢様。」


そう言ってお辞儀をすると、ニヤつきながら飛鳥姉さんが


飛鳥「ほうほう、そういう感じなのか、3人のクラスは。」
理央「俺はしないけどね。ウチの可愛いメイドさんかイケてる男装女子が接客致しますので、お楽しみに。」
佑唯「カワイイなんて。もう理央君！」
理央「イテッ！」


ご機嫌な顔で俺の腕を思い切り叩く。


由依「…ずーみんはノリノリだもんね。」
理央「小林はイヤなの？」
由依「…恥ずかしいし、おまじないとかホント最悪。」
佑唯「大丈夫だって！ゆいぽんカワイイし、人気出るよ。」


佑唯はニコニコしながらそう小林に言うと、


飛鳥「確かに恥ずかしいよ、アレ。」
理央「去年姉さんやってたよね。俺も行ったけど、オムライスにドクロ書かれて、おまじないどころか毒吐かれるっていう斬新なメイドさんだった。」
飛鳥「うるさいなー。手でハート作っておまじないなんて出来るか。」
理央「でもそれが何故か大人気っていうね。」


世の中には特殊な趣味の人もいるんだな、と思った。


理央「とにかく、小林もそれだけ可愛いんだから普通にやれば問題ないから。」
由依「…あ、ありがと。」


そんな事を話していると、口が尖っている佑唯。


理央「どうかした？ 」
佑唯「…私とゆいぽん、どっちがカワイイメイドだと思ってるの？」


また答えにくい質問を…。
飛鳥姉さんはニヤニヤして俺の答えを待っているし、小林は心配そうな顔をしている。


理央「うーん…その答えは、今日の帰りに教えてあげる。」
佑唯「えー？」


不服そうな佑唯だが、時間も限られているので、


理央「今日家まで送るから、ね？」
佑唯「仕方ないな〜。」


すっかり態度を軟化させる佑唯。


由依「…上手くかわした。渡邉君、やるなぁ。」
飛鳥「何？もしかして小林ちゃんって言って欲しかった？」
由依「えっ？！そ、そんな事ないです！」
飛鳥「ふふ、まあ詮索はしないでおこう。」
理央「さあ、おしゃべりはこの辺にして、練習しようか。明日の本番、バンドの中ではトリだから、気合い入れていかないと。」
佑唯「うん！」
由依「そうだね。」
飛鳥「まあ、へーきだよ。飛鳥ちゃんに任せとけ。」




♫〜

由依「うん、いい感じ。」
佑唯「じゃあ今日はこれで終わりにしよう。」


1時間ほど練習し、ミスもほとんどなくなったところでお開きの声が掛かった。


理央「…明日の事考えたらなんか緊張するかも。」
飛鳥「へえ、珍しい。理央でも緊張するんだ。」
理央「そりゃあするよ。大勢の前で歌う事なかったし。」


そんな話をしていると、


佑唯「…そういうのに負けないように路上で歌ってるんだ、私も。」
由依「応援してくれる人だけじゃないから、この世界は。…でも、いつか渡邉君が言ってくれた言葉は私達の支えになってるよ？」
飛鳥「何言ったの？」
理央「恥ずかしいから言わない。」


そう言うと、姉さんは佑唯の首に腕を回し、


飛鳥「おい、今泉ちゃん。何言われたんだ？」
佑唯「えっ、あ、『dreams come true 』と 『dream comes true』の意味の違いの話です。」
飛鳥「…へえ。…………で、どういう意味？」


思わぬセリフに、コケそうになる俺と小林。
そういえば、姉さんあまり勉強は得意じゃなかった。





飛鳥「へえ〜そういう事か〜。さすが理央。」
理央「うるさいな〜。からかってくるのわかってるから、言いたくなかったのに。」
佑唯「ゴメンね理央君。」


申し訳なさそうな顔をする佑唯に、


理央「いや、怒ってる訳じゃないから。さ、そろそろ片付けて帰ろうか。」







飛鳥「じゃあまた明日。」
理央「お疲れ、姉さん。明日も頼むね。」
飛鳥「おう、今泉ちゃん、小林ちゃん。」
「「はい。」」
飛鳥「さっきの答え、ちゃんと聞いて私に報告する事。」
理央「………。」



とんだ爆弾を落として姉さんが去って行った。


困ったなぁ…。