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第7章
第6話
その日の放課後、美愉に頼まれて調理班の打ち合わせに参加する。


菜々「じゃあ、メニューは3種類に絞るって事でいいの?鈴本。」
美愉「…うん。オムライスに、パンケーキ。これはメイドがお絵かきしたりするのが前提。あとは作り置きしておけるカレー。」
菜々「じゃあこれで準備を進めます。前日にカレーの仕込みとか食材の下準備をするのでお願いします。」


班長の美愉、副班長の長沢が珍しくテキパキと話を進めメニューがあっさりと決定した。


理央「飲み物は?」
美愉「…出来れば種類を絞りたいかな。」
菜々「コーヒー、紅茶、ウーロン茶、炭酸系、後はオレンジかアップルみたいな感じでどう?」
理央「じゃあどうせだからコーヒーと紅茶は、マーブルから豆と茶葉を仕入れようか?」


そう言うと、みんなから賛同を貰えたので明日のバイトの時に美彩さんにお願いすることにした。



打ち合わせが終わり、美愉と長沢、俺の3人が教室に残っていた。


理央「2人とも意外にテキパキ話を進めてたな。」
菜々「意外って何?」
理央「あ、ゴメン。どちらかと言うとそういうタイプじゃないと思ってたから。」
美愉「…うん。いつもはそうだけど、今回は頑張りたくて。」
菜々「渡邉君が一緒だからでしょ?」
美愉「ちょっと、菜々香!」


慌てて大きな声を出した美愉と、どんな感情なのかさっぱり読めない長沢。


理央「まあ、美愉の理由はともかく、長沢はどうなの?」
菜々「私、あまり誰かに頼られることないから。今回、料理ならみんなの役に立てるかなって。」
理央「長沢が料理得意だって俺もさっき聞いた。なら大丈夫そうだし、どうせなら美味しいもの作って売り上げNo.1目指すか。」
美愉「…うん。」
菜々「最優秀クラスになったら学食割引券貰えるんだよね?」


そう、欅学園は体育祭同様に学園祭でも賞品が用意されている。

1か月間、学食が5割引になる割引券の贈呈、それが今回の賞品だ。


理央「そうだよ。だから結構どのクラスも気合入ってるよな。」
菜々「割引券欲しい…。」


食欲旺盛な長沢らしい呟きに美愉と苦笑いするしかなかった。


菜々「そうだ、もう帰らないと。」
美愉「…何か用事?」
菜々「本屋に行かないと。漫画の発売日だった。」


突然帰る支度をして、教室を出ようとする長沢。


理央「お、おう。じゃあお疲れ。」
美愉「…バイバイ、菜々香。」
菜々「うん、じゃあ。」


そそくさと教室を出た長沢を見送り、2人で顔を見合わせる。


理央「長沢、独特だな。」
美愉「…うん。マイペースだから。」
理央「あ、部活は?」
美愉「…出る。理央はどうするの?」
理央「ああ、俺も学校に残る。やる事あるから。」
美愉「…一緒に帰らない?」
理央「いいよ。じゃあ終わったらダンス部の部室前で待ってる。多分俺の方が早いし。」
美愉「…ふふ、やった。」


少し、耳が赤い美愉が笑ってそう言った。







♫〜

飛鳥「なんかいい感じだね。」
理央「そう?」
由依「これならいつでも本番イケるよ。」
佑唯「うん、当日が楽しみ〜。」


俺は、軽音部で練習に参加していた。


理央「2人は他の曲の練習してるの?」
佑唯「うん。2人の参加しない日にやってるから。」
由依「それに、私達路上ライブもやってるし。」
理央「知らなかった。教えてくれたら聴きに行くのに。」
佑唯「土日の昼間にね、駅前とかでやってるんだ〜。」
飛鳥「なら今度聴きに行こうか、理央。」
理央「うん。」


そんな話をしていると、


佑唯「あ、もうそろそろ終わりにしないと。」
由依「そうだね。片付けようか。」
飛鳥「じゃあ、私はお先。」


スティックを持って部屋を出る飛鳥姉さん。


理央「お疲れ様、飛鳥姉さん。」
佑唯「お疲れ様でしたー。」
由依「今日もありがとうございます。」
飛鳥「私も結構楽しんでるから。2人も先輩だからってそんなにかしこまらなくていいぞ。」


そう言って珍しく優しい顔で片手を上げ帰って行った。


その後、部屋の掃除も終わらせ帰る支度をする。


理央「じゃあ帰るかな。」
佑唯「あ、理央君一緒に帰らない?」


佑唯のその言葉に、


理央「ゴメン佑唯。今日は先約があるんだ。」
佑唯「そっか…。」
理央「今度の練習日は一緒に帰ろうか。」
佑唯「じゃあ約束ね?」


そう言って右手の小指を差し出す佑唯。
俺も同じ様に差し出して指切りをした。


佑唯「指切りげんまん、嘘付いたら私の彼氏になっても〜ら〜う、指切った!」
由依「ねえ、ずーみん。それなら約束破ってもらった方が良いんじゃない?」
佑唯「あっ!そうだね、理央君破ってもいいよ?」


ニヤニヤしながらそう言った彼女。


理央「小林〜、佑唯に変な知恵をつけるなって。…佑唯、ホントに帰らなくて良いのか?」
佑唯「うっ。…ん〜やっぱり一緒に帰りたい。」
理央「佑唯は良い子だ。でも、途中までは小林とも一緒だからな。」
由依「私は気にしなくていいのに。」
理央「そんな訳にいかないよ。小林も大事な仲間だし。」
佑唯「理央君、やっぱり優しいね。私もゆいぽん大好きだからそれで大丈夫!」
由依「もう、ずーみん。ふふ、渡邉君、ありがとう。」
理央「いーえ。じゃあまた明日な。」
佑唯「うん、バイバ〜イ。」
由依「お疲れ様。」



俺は部屋を出て、ダンス部の部室に向かった。



部室の前に来ると、冬優花達は出て来たが、美愉の姿はない。


冬「あれ?理央。」
瑞「あ〜もしかしてすずもん?」
理央「まあ。」
虹「もんちゃんならまだ練習してるよ。遅れて来たから、もう少しやるって。」
理央「そうなんだ。」
冬「理央、鈴本屋上で練習してるから後はよろしく。私達先に帰るから。」
理央「了解。みんなお疲れ様。」
「「「バイバ〜イ。」」」


俺は屋上に向かった。


hinata ( 2018/05/11(金) 22:45 )