R's














小説トップ
第1章
2話

理央「何とか間に合った…。」


無事に辿り着いた校門前で一息つく。






俺の通う欅学園は、3年前まで女子高だったため今でも男女の比率が2:8になっている。

またこの学園は代々可愛い子が集まると有名なため、共学になる事が決まった際にはかなりの数の男子が受験したらしい。


だが、男子の合格基準は女子に比べ格段に厳しく、学力や運動能力の高さや人格、学園の評価向上が期待できる人材のみを合格させるとの方針のため、男子の倍率は20倍という狭き門になっている。


俺は別の高校を受験しようと考えていたが、理佐に『私と同じ欅学園受けて。』と執拗に迫られ、そこに愛佳までが乗っかり連日の説得(脅迫?)に俺が折れて3人で受験した。


ちなみに中学時代の俺の成績なら問題無いと担任に太鼓判を押されていたので、無事合格できた。



受験、合格発表、入学式までの理佐はすこぶる機嫌が良く、人生でも一二を争うくらいだった。


まあ、俺と愛佳とクラスが別なのを知った瞬間、えらく不機嫌になったのだが。


元来、人見知りでツンデレ(殆どツンだけど)、口数の少ない理佐はあまりクラスで友人が作れなかったらしい。

去年はいつも『早くクラス替えしてほしい、愛佳と理央と同じクラスになりたい』とぼやいていた。


そして今年の春。2年生になった俺達は同じクラスに。


クラス分けの掲示物のB組の欄に3人の名前を見つけると、理佐は思い切り俺に抱きついてきた。


その嬉しそうな顔を見ると、最初は抵抗したものの、『まあいいか』と受け入れ頭を撫でてやると、今度は後ろから愛佳が抱きついてきて、周りからは羨望の眼差しや、ひそひそと声が聞こえてくる始末。


各学年200人もいれば、俺達が双子だという事を知らない連中もいるし(二卵性の双子だからそこまで似てないし)、『ザ・クール』は校内でも有名だからまあ仕方ないだろうな、そんな風に考えていた。



おかげでしばらくクラスメイトから色々言われたけど。


そんな日常もひと月もすればすっかり落ち着き、平和な毎日を過ごしている。





理佐「理央、いつまで休んでるの?あ、膝…。」
理央「いや平気。」
愛「もうチャイム鳴るよ。」
理央「ああ、行こうか。」




ギリギリで教室に滑り込むと、直後に担任の澤部先生が入ってきた。


澤「みんなおはよう。おい渡邉姉弟、志田。遅刻ギリギリじゃないか。もっと余裕を持って登校しなさい。」
「「「はーい。」」」


席に着くと、1つ前の席に座る男子が振り向きながら声をかけてきた。


悠「遅かったな。真面目な理央にしちゃ珍しく。」


こいつは吉沢悠。去年も同じクラスで数少ない俺の男友達だ。


理央「理佐が寝坊したからな。」
悠「へえ、相変わらず仲良しな姉弟なことで。」
理央「後が面倒だからな。」


その瞬間、殺気を感じ視線を横に向けると理佐と目が合う。


何余計な事言ってるんだと目が訴えている。


悠もそれを感じ取ったらしく、


悠「ご愁傷様。」


と手を合わせて前を向く。


俺は溜め息を一つついて、この後の対応に頭を巡らしていた。



hinata ( 2017/12/24(日) 06:45 )