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第1章
18話


友梨「理央さん生徒会に入ったんですね。」
理央「もしかして葵ちゃんに聞いた?」
友梨「もう葵ちゃん呼びですか?ふぅん…。」


マーブルに来て着替えるや否や、てちが話を切り出し、今はジト目で俺を見ている。


理央「そんな目で見るなよてち。」
友梨「私の事、てちって呼んでくれるようになったのだって最近じゃないですか。なのに葵の事はすぐ葵ちゃんって…。」
理央「それはそうだけど、ほら、あの子はなんかちゃん呼びしたくなる感じだろ?だから何となく…。」


そう言うと今度は、


友梨「…あだ名じゃなくて名前で呼ぶのはズルいです。」
理央「は?」
友梨「私の事も名前で呼んで下さい。」
理央「ええ?」


俺の顔をジッと見続けるてち。
この子はかなり頑固と言うか意志の強い子だから呼ぶまでテコでも動かない気がする。


理央「分かったよ『友梨奈』。ほらもう店に出るぞ。」
友梨「はい!」


名前で呼ぶと、先程までの表情が嘘のように満面の笑みを見せる。





美彩「随分着替えるの時間掛かったわね〜。イヤラシイ事でもしてた〜?」
理央「致しません。友梨奈が真っ赤になってるのでやめて下さい。」
友梨「………。」
美彩「あれ〜、いつの間に名前で呼ぶようになったの〜?…ふふ、もしかして〜。」
友梨「…私がお願いしました。」
理央「はい、お願いされました。さ、お客さん来ますよ。いらっしゃいませ。そちらの席にどうぞ。」


俺が水を持って女性客を席に案内している間、


美彩「…ふふ、一歩前進かな?」
友梨「…どうですかね。鈍感ですから、理央さん。」
美彩「…やっぱり、ちゃんと言わないとね。」
友梨「…はい。」
美彩「…若いって良いわね〜、青春だ。」
友梨「…美彩さんも若いじゃないですか。私も美彩さんみたいにキレイな女性になりたいです。」
美彩「ん〜カワイイ事言ってくれるじゃない。おねーさんますます応援しちゃうからね?」


友梨奈に抱きついている美彩さんに、


理央「何してるんですか?カフェオレとシフォンケーキのセットとコーヒーと特製パンケーキのセット1つずつお願いします。」
美「りょうか〜い。平手ちゃん、頑張ってね〜。」
友梨「はい。」
理央「何を頑張るんだ?」
友梨「し、仕事ですよ。あ、お客さん呼んでるので行ってきます。」


そそくさと俺から離れる友梨奈。


理央「美彩さん、友梨奈に何か吹き込んだんですか?」
美「随分な言い方するわね〜。平手ちゃんがみさみたいなキレイな女性になりたいって言うから〜。」


手を動かしながら答える美彩さん。


理央「まあ、キレイなのは事実ですからね。」
美「なぁに?その引っかかる言い方?」
理央「いや、容姿は申し分ないですけど、中身はエロいお姉さんだか…イテッ!!」


美彩さんの投げたおたまが頭を直撃する。


その昔、白石先生とソフトボール部でバッテリーを組み全国制覇したという強肩が炸裂した。


美「口は災いの元よ、よく覚えておきなさい。」
理央「…はい。」


おたまを拾い洗っていると、莉菜さんがやって来た。


莉「お疲れ様でーす。」
美「あ、莉菜ちゃんご苦労様。」
理央「お疲れ様です。」
莉「お、生徒会副会長になる理央君。バイトしてる暇はあるの?」
美「え〜そうなの?理央、ウチ辞めたりしないよね?」
友梨「えっ?」


オーダーを取って戻って来た友梨奈がペンを落とす。


理央「いえ、辞めないですよ。そういう条件で受けましたから。まあ、美彩さんがクビって言うなら辞めなきゃいけませんけど。」
美「そんな事言わないよ〜。さっきは一瞬思ったけど。」
理央「…マジっすか。」
莉「へえ〜、そんな条件のむなんてゆっかーは随分理央にご執心だね〜。さ、着替えて来ま〜す。」


そう言い残してロッカーに向かう莉菜さん。


そして莉菜さんの最後の言葉に普段と違う反応を見せているのは、



友梨「…今度は会長ですか?やっぱり理央さんはチャラ男ですか?」


普段よりも一段と低い声。睨みつけるような鋭い目。


正直結構怖い。
何となくオーラがあるんだよなてち…じゃなくて友梨奈。


理央「少なくても俺発信の案件じゃないんだから、どうしようもないだろ?」
友梨「じゃあ葵の頭ポンポンしたっていうのはどう説明しますか?」


どうやら葵ちゃんはお喋りな子らしい。
余計な爆弾を落とした莉菜さんにも困ったものだと思いながら、


理央「そんな顔するな。せっかくの可愛い顔が台無しだぞ。」
友梨「…そ、そんな台詞でごまかそうとしてもダメですからね。」


一瞬、表情が緩んだのを見て、


理央「もう機嫌直せ。俺達の仕事は接客なんだから。はいスマイル、スマイル。」


そう言いながら頭をポンポンしたあと、頬を掴み口角を上げるようにする。


友梨「ふぁい。ふぁふぁっふぁほふぇふぁふぁひへふふぁふぁひ。(はい。分かったので離してください)」
理央「ふっ、あ〜ゴメンな。さて、またお客さんだ。」




俺が接客に向かった背中を、友梨奈は頬を赤くしながらボンヤリと見ていた。


美「…ホント理央はタラシだね〜。ふふ、頑張れ平手ちゃん。」


美彩さんの呟きは、俺にも、そして友梨奈にも届くことはなかった。


■筆者メッセージ
鼻水が止まりません。
鼻をかみすぎて痛いです。


hinataです。


今日も早くに更新してしまい、この後の話を考えたいと思います。


ではまた。
hinata ( 2018/01/05(金) 10:36 )