No.2
飛「………ん〜なんて送ろう……。」
連絡先を交換してから3日。
私は未だ彼に連絡を取っていなかった。
打ちかけては消して、また書いては消して、その繰り返し。
異性が気になるという経験を全くと言っていいほどしてこなかった私には、ヒット祈願の一人旅より難しい課題だと感じていた。
そんな時、
日「ねぇあっしゅんどうしたの?」
飛「えっ!?な、何でもない。」
突然日奈子に声をかけられ、慌ててLINEの画面を消す。
日「随分慌ててるね〜。」
飛「な、何でもないから!…さてと、飲み物買ってくる。」
これ以上の詮索から逃れるため、スッと席を立ち楽屋のドアに向かう。
日「変なあっしゅん。」
疑いの眼差しを向ける日奈子の視線を感じながら楽屋のドアを閉めた。
ドアにもたれながらため息をつく。
そんな時、スマホからLINEの通知音が。
開くと気になっている彼からの連絡だった。
飛「…暁さんだ。」
内容を見てみる。
暁『この間、LINEを交換した本田です。自分全然知らなかったんですけど、齋藤さんって乃木坂46のメンバーなんですね。』
暁『齋藤さんにご迷惑をかけたくないので、先日のお礼は結構です。生の芸能人に初めて会えたのが齋藤さんで良かったです。では失礼します。』
思わずスマホを落としそうになった。
慌てて返事を送り返す。
飛『先日はありがとうございました。あの、お礼はどうしてもしたいので明日の夜、都合いかがですか?』
暫くして既読がつく。
暁『いや結構です。』
飛『そう言わないで下さい。お願いします。』
暁『そもそも大した事してませんし。』
飛『私がそうしたいんです。』
暁『本当に頑固ですね。…わかりました。ならマネージャーさんなど大人の方も一緒ならお受けします。』
飛『ありがとうございます。場所、時間は後で連絡しますね。』
何とか約束は取り付けたものの、マネージャーも一緒か…。
そんな事絶対に頼めない……。どうしよう……。
飛「あっそうだ!」
奈「…で私?」
飛「こんな事頼めるのメンバー以外の大人って奈々未位じゃん。」
奈「確かに卒業してるけど、メンバーの色恋沙汰に首突っ込むのはねえ。さすがに今野さんに怒られるじゃない。」
飛「まだ恋だって決まってない。」
奈「本当?」
飛「…よくわかんない。でもなんかザワザワする。」
奈「へぇ。」
飛「何だよ〜。」
ニヤニヤしている奈々未を膨れっ面で見ていると、
暁「齋藤さんこんばんは。」
彼に声をかけられ慌てて振り返る。
飛「こ、こんばんは。」
奈「本田さんですか?」
暁「はい。」
奈「初めまして。飛鳥の保護者として同席する…、」
暁「橋本奈々未さんですね。」
奈「え、えぇ。」
暁「自分、橋本さんと同じ高校なんです。お会いできて光栄です。」
奈「へえそう。今回は飛鳥がお世話になったみたいだね。どうもありがとう。」
握手を交わす2人。
置いてけぼりになりそうな雰囲気に、思わず声を上げる。
飛「ねえ奈々未。」
奈「あらゴメン。あ本田君、でいいかな?」
暁「はい。」
奈「この子がどうしても君に会いたいって事だったんだけど。」
暁「その事ですけど、自分はやはりお断りしようと思って…。」
飛「ダメッ!」
奈「って事みたいだから、ちょっとついて来てもらえる?」
仕方ない、そういう雰囲気を出しながら頷く彼を連れ目的の店に向かう。
その途中、奈々未が小さな声で
奈「なかなかいいセンスしてるわね飛鳥。上出来じゃない。」
と言われて、思わず奈々未の背中をペシっと叩いた。
奈「照れなくてもいいじゃない。飛鳥も大人の女性に一歩近づいたって事よ?」
続けざまにそう言われ、きっと私の顔は赤くなってしまっているに違いない、そう思うほどに顔が熱い。
夏の暑さのせいではきっとない。