M.F & N.H.s story
No.1

麻「ななみんも卒業か…。」


ななみんから『今日発表するからその前にまいまいには伝えておくね』という連絡が届いた。


詳細を知った私からは『お疲れ様。まだ期間もあるし、また今度ご飯一緒に行こうね。』とだけ送った。


真「どうしたの麻衣?」
麻「ん?あのね、ななみんが乃木坂卒業するんだって。」
真「そう。麻衣が卒業して今度は橋本さんか…。でもこれからもモデルとか芸能界で仕事するんでしょ?」
麻「ううん。芸能界も辞めるって。」
真「えっそうなの?…橋本さん結構好きだったんだけどな…。」


彼のボソッと呟いた言葉に思わず反応してしまった私。


麻「真はななみん推しなんだ…。ふぅ〜ん。」


多分不満が顔に出てるんだろうなぁ。…私の方が年上なのに。


聖母なんて呼ばれてた私も彼の前では普通の女の子で、拗ねたり嫉妬したりしてしまう。


真「そんな顔しないの。麻衣って意外と幼いところあるよね。まあそんなところも可愛いけど。」


そう言いながらソファに座っていた私の隣に座り抱き寄せた。そんな事されるとさっきまで拗ねてたはずの私はあっさりと彼に降伏してしまい、笑顔にされてしまう。




彼は『可愛い』だとか『好き』と言う言葉をサラッと口に出す。
数ヶ月前まで恋愛禁止だった私をドキドキさせる術をいとも簡単に繰り出してくる。


この間その事を言うと、『思った事をちゃんと口にしないと伝わらないでしょ?以心伝心の域に達するにはまだ過ごした時間が足りないだろうし。』と返された。







彼とは今所属する事務所で出会った。
マネージャーではなく、営業が彼の仕事で特定の所属タレントには付いていなかった。


ちゃんと話しをしたのは、私の歓迎会を兼ねた顔合わせの時だった。


麻「深川麻衣です。えっと、」
真「結城真です。」
麻「結城さん。これからよろしくお願いします。」
真「こちらこそ。あの深川さん、貴女はこれからどんな仕事をされたいですか?」
麻「え?あ、出来れば演技のお仕事がしたいと思っています。」
真「そうですか。深川さんの資料に目を通させて頂きましたが、申し訳ないですけど現段階では演技の面の力不足は否めません。」
麻「………。」


仕事の話をしたかと思うと、手厳しい言葉が投げかけられる。もちろん自分でもわかっているつもりだけど、はっきり言われると中々辛い。そう思っていると、


真「ですが貴女には伸びしろがまだまだありますし、何よりこの世界では珍しい位人柄が良いです。所詮この世界、最後は人の心をつかむ事が出来るかどうかです。アイドル時代に積み上げてきた貴女の努力が報われるよう
我々スタッフも後押ししますので頑張りましょう。」
麻「は、はい。こちらこそよろしくお願いします。」


その言葉で改めて私も『深川麻衣』として独り立ちしなければと決心を一段と強くした。


その後も、時には厳しく、時には励ましてくれる彼に惹かれていくのに時間はかからなかった。



告白は私からだったけど、彼は『本当は一目惚れしてました。あの時厳しいこと言ったのもその方が貴女の印象に残ると思ったので。』と照れくさそうに言った彼の顔は忘れられない。








真「今度まとまった休み出来たら温泉に行って来ようか?」
麻「うん、いいね。行こう行こう。」
真「じゃあ色々調べておくから楽しみにしてて。」
麻「楽しみだなぁ。」


2人で過ごすこの時間がとても幸せだった。




あれから数日、電話が鳴る。


麻「あ、ななみんからだ。」


奈『あ、まいまい?今電話大丈夫?』
麻『うん、大丈夫だよー。』
奈『今日の夜は忙しい?』
麻『大丈夫、空いてるよ。』
奈『まいまいとご飯食べに行きたいんだ。』
麻『もちろんOKだよ。じゃあいつもの所が良いかな?ゆっくり話もしたいし。』
奈『そうだね。じゃあ7時で予約入れておくから。』
麻『わかったー。それじゃまた後でね。』
奈『うん。』



そこで思いもよらない展開が待ち受けていた。



hinata ( 2017/03/10(金) 00:07 )