No.3
温泉旅行当日。
空港で待ち合わせをしていた自分達。
約束の15分前に着き、彼女に連絡をしてみるとすでにロビーで待っていた。
歩「早いな。」
小「すっごい楽しみだったから早く目が覚めちゃって。」
歩「悪いな、俺の分出してもらって。小百合へのご褒美だったのに。」
小「いいの、1人より2人の方が絶対楽しいし。」
歩「それもそうだな。ありがとう小百合。じゃあ行くか。」
小「うん!」
笑顔の彼女を見て自分も嬉しく楽しい気持ちになる。
小「着いた〜。」
歩「お疲れ。さ、入ろうか。荷物貸して。」
小「え、いいよ〜。」
歩「そのくらい甘えなさい。ほら。」
小「あ、ありがとう。」
荷物を受け取る時手が触れる。
彼女は頬を染め、自分もドキッとしてしまった。
歩「え、同室?」
小「うん。ここ評判の所だから部屋が空いてなくて…。嫌だった?」
歩「いや、そうじゃなくて問題ない?さすがに男と女だし。…小百合アイドルだし。」
小「私は気にしないよ。すぐ温泉入りたいしほら部屋入って?」
歩「う、うん。」
さっき手が触れた時よりも一段とドキドキしている。
さすがに彼女には洗面所で浴衣に着替えて貰い2人で温泉に向かう。
ただ、ご機嫌な様子の彼女を見て自分も楽しく、さらに浴衣姿も見られて顔がにやけてしまった。
歩「じゃあまた後で。ゆっくり楽しんで来て。」
小「うん、歩も。」
歩「めちゃくちゃ気持ちよかった〜。俺も来れてよかったな。」
宿の庭が見える休憩室で休んでいると、
小「いい温泉だった〜。」
湯上がりの彼女はいつもより色っぽく、またしてもドキドキしてしまう。
歩『俺の心臓持たないかも…。』
その後、部屋で晩ご飯。
北海道の新鮮な食材で作られた料理に舌鼓を打ちながら少しだけお酒も飲んだ。
お酒で頬を赤く染める彼女。
歩「小百合ってさ。」
小「ん〜何〜?」
歩「やっぱり可愛いよな。さすがアイドル。」
小「何言ってるの急に…。恥ずかしいじゃん。」
そう言って自分をペチペチと叩く彼女。
お酒の勢いとはいえ、つい発した言葉に自分も照れてしまった。
その後、再び温泉に入り部屋に戻ると、布団が並んで敷いてあった。
それを見て互いに顔が赤くなったのが分かる。
歩「…さすがに少し離そうか。」
小「う、うん。そうだね。」
布団を少し離し、窓のそばにあるイスに2人座る。
小「凄く良かったねこの温泉。…ありがとう最高のご褒美だったよ。」
歩「こちらこそ。小百合のおかげで俺も来れたし、飯も美味かったし、最高の旅行だよ。」
「「…あのさ、」」
歩「…小百合からいいよ。」
小「…えっ、歩から言ってよ…。」
そう言って自分から視線を逸らした彼女。
歩「…じゃあ。今回さ、こうやって俺も誘ってくれたじゃん。」
小「…うん。」
歩「それってさ、…少し期待してもいいのかな?」
そう言うと、こちらを向き驚いた表情を見せる。
そして、少しの間が空いて彼女が口を開く。
小「…気付くの遅いよバカ…。」
歩「バカって…。」
小「ずっと好きだったんだからね。」
そう言って微笑む彼女の横顔を月の明かりが優しく照らしていた。