No.3
あれから3ヵ月ほど経ったある日。
乃木坂工事中の収録で選抜メンバーが集まる楽屋での事。
七「航さ〜ん。ちょっと〜。」
航「何ですか西野さん?」
七「眠たくなったからここ、座ってくれへん?」
航「はあ…。」
自分をソファに座らせる西野さん。すると、西野さんは彼女の方を見てニヤニヤしながら僕の太ももに頭を預ける。
いわゆる膝枕と言うものだ。
その様子を彼女はチラチラと伺う様に見ている。
七「う〜ん、やっぱ航さんの膝枕はええなぁ。なな、もう航さんの膝枕無しでは寝られへんかも。」
航「ちょっと西野さん、何を言ってるんですか。」
七「ええから、航さんは大人しくしとって。…こうしとる時のかずみんが面白いねん。」
自分にのみ聞こえる声でそう言った西野さん。
あの日以降今まで通りに見えるよう振る舞っていたつもりだが、あっさりと自分たちの関係は西野さんにバレてしまっていたようだ。
彼女は明らかに落ち着きがなくなっていて、化粧用品を落としたり、立ったり座ったりを繰り返したりしていた。
少しして我慢出来なくなったであろう彼女がそばに近づいてきた。
その表情には不安と不満、両方が浮んでいるように感じた。
一「…なぁちゃん、航さん。」
七「どないしたん?かずみん。」
すると3人にしか聞こえない声で話し始める。
一「なぁちゃんどういうつもり?」
そう彼女が聞くと、西野さんはニヤリと笑いながら
七「こうしたら嫉妬するんやろ?こうしてる時のかずみん面白いんやもん。」
すると自信なさげな顔で、
一「やめてよ〜。…なぁちゃんに航さん取られるんじゃないかって不安になっちゃうよ。…私じゃなぁちゃんに勝てないもん。」
そう言うと西野さんは起き上がり、彼女に告げる。
七「…なぁかずみん、もうメンバーにはちゃんと話したらええんやない?かずみんだって知ってるやろ、航さんのメンバー人気が高い事くらい。」
航「え?」
予想外の言葉に驚く。
そしてその言葉にすごすごと頷く彼女。
七「なんや航さん鈍感やな。バレンタインメンバー殆どからチョコやら貰っとったやん。」
航「え、あれは義理チョコですよね?」
七「何言うてんねん、航さんのチョコは他の人に渡したのと違うやつだったメンバー10人、いや15人はおったで。」
航「そうだったんですか?全然知りませんでした。」
一「…だから余計不安なんだよ〜。」
七「ななやって特別なの渡してたんやけど気づいてへんかった?」
一「えっ?!」
その大きな驚きの声でメンバーがこちらを見る。
七「ほらかずみん、大丈夫やで。みんなかずみんの言葉は聞いてくれるから。」
そう言って、彼女の背中をさする西野さん。
覚悟を決めたのか、彼女はメンバーの方に向き口を開いた。
一「航さんは誰にも渡さないからー!例えなぁちゃんが相手でも。私の1番大事な人なんだから!」
そう言うと、メンバー達はキョトンとした表情の後、ニヤニヤとし始めた。
麻「やっと白状したね〜。」
美「そうだよね〜。今まで隠してたつもりかもしれないけどみんな薄々勘付いてたんだけどな〜。」
一「え?」
航「そうだったんですか?」
奈「航さんもかずみんには特に優しく対応してたし。」
飛「…航さんのばーか。」
絵「航さん、他の大人には内緒にしておきますから差し入れお願いしますね。」
「「「お願いしまーす。」」」
一「みんな…。」
そう言うとメンバーがそれぞれ彼女を祝福する。
その様子を見ていると、横から声をかけられる。
七「航さん。」
航「何でしょう西野さん?」
七「…かずみんのこと幸せにせんと煮込んだる。」
航「はい、必ず。」
笑顔でそう返事を返すと、西野さんも満足気な表情で彼女の元に駆け寄って行った。
すると今度は齋藤さんと星野さんがこちらに寄って来た。
航「どうかしましたか?星野さん、齋藤さん。」
飛「さっきは『ばか』とか言ってごめんなさい。もう言わないので…。」
み「みなみ達も大事にしてくれなきゃヤダぞ。」
可愛らしい表情でそう言われ、
航「もちろんです。皆さんのことは何より優先で大切ですから。」
そう答えた瞬間、殺気を感じる。
そちらを向くと彼女が鋭い視線で見ていた。
一「…飛鳥やみなみに釣られてませんでした?」
いつもの裏声ではなく地声で放たれたその言葉に自分もメンバー達も凍りつくしかなかった。
『もう航さん弄りは止めておこう…』
メンバー達はそう心に誓ったひと時だった。