No.1
久美「ちょっとみんなー!」
スタッフに呼ばれ別室に行っていた久美さんが戻るなりメンバーに声を掛けた。
史帆「どうしたの〜?」
いつものように騒がしい楽屋がキャプテンの号令で静まり、視線を向ける。
久美「日向坂になったので新しいマネージャーさんが増えました!みんなに紹介するね。」
どんな人かな〜やらやっぱり女の人?やら近くにいるメンバー同士が言っている中に彼らは入ってきた。
類「…初めまして、平沢類です。」
慎「同じく平沢慎です!よろしくお願いします!」
京子「えっ!?同じ顔?」
明里「もしかして双子ですか?」
久美「そうだって。さっき会ってびっくりしたー。」
慎「類が兄、慎が弟です。新採なので至らない点があるとは思いますが精一杯頑張ります。」
類「…。」
弟の慎がそう言って頭を下げると、隣に立つ兄の類もスッと礼をする。
少し無愛想な兄、類と明るく柔かな弟、慎。
その後のメンバーとの会話でも十分にそれは伝わったらしく、大半の子は慎と話をしている。
その様子を見て類はスッとその場を離れ、楽屋の隅に移動するとタブレットを取り出し、何か作業を始めた。
しばらくして手を止めると今度は先輩のマネージャーの元へ行き、何やら話し始めた。
そしてメンバーの方に視線を偶に向け、再び作業をする。
菜緒「…何してんのやろ?」
美穂「どうかしたの?」
菜緒「え、あ、イヤ何でもない。」
美穂「菜緒は慎さんと話しした?話しやすくて良い人っぽいよ。」
菜緒「ウチは人見知りやし、少しずつ…かな。」
美穂「そっか。」
先輩マネ「さあ、そろそろ時間だぞ!」
「「「はい!!」」」
冠番組の収録が始まるため楽屋を出る。
ふと視線を上げると、収録の始まったスタジオの隅で2人がひそひそと話し始める。
慎「…どう?」
類「…データがもう少し必要だな。…ただ…、」
慎「…了解。」
類「…準備してくる。」
類がタブレットを慎に預けるとスタジオを出る。
菜緒「………。」
若林「小坂どうかしたか?ボーッとしてたけど。」
菜緒「えっ、あっ、だ、大丈夫です。」
鈴花「こさかなの事ばっかり見てる〜。」
史帆「ひいきだひいきだ。」
若林「イヤイヤ。」
史帆「やっぱり若林さん、おたけとこさかなひいきし過ぎだよ〜。」
紗理菜「この間のラジオでコメントもらってたじゃん。」
美玲「そうそう。若林さん、ホントは史帆も推しメンなんじゃない?」
史帆「そ、そうなのかな〜。だったら…嬉しい〜。」
1本目の収録が終わり楽屋に戻った彼女達。
すると、
京子「あれ?私の席に…。」
久美「ホントだ。飲み物みたいだね。」
そこに、
慎「あ、すいません。齊藤さん、今日少し喉の調子良くないみたいなので、ホットレモネードに蜂蜜と生姜を入れた物を用意しました。」
京子「あ、ありがとうございます。」
史帆「京子喉の調子悪かったの?気付かなかったけど〜。」
京子「でもまだそんなには…。」
彩花「気をつけるに越した事ないよ。これから歌番組出演もあるから。」
京子「そうだね。いただきます。」
菜緒「………。」
美穂「菜緒、難しい顔してるよ?」
菜緒「あ、何でもあらへん。」
美穂「………。」
類は相変わらず隅で作業を続けている。
そして、手を止め先輩マネージャーにタブレットを見せ、
類「……が……ので、………が必要だと思います。」
先輩「わかった、頼む。」
部屋を出る類に、
菜緒「…またや。」
彼の行動がどうしても気になっていた。