02
彼女たちの反応を見るに、賛成が三人。中立が三人。反対が三人のようです。
賛成派の意見としては「面白そう」「時間潰しになる」といったもので、運動神経に優れた人や、何事も楽しみたいといった好奇心旺盛な人のようです。
逆に反対派の二人は「暑いから」「運動が苦手で」といった、ネガティブな考え方を持った人のようです。
中立派の三人は「どっちでもいい」「任せる」といった、相手任せのようです。
「ねえ、やろうよ」
少年は早くやりたくてたまらないといった様子で、彼女たちを急かします。
「こんな子供がやりたいって言ってるんだよ。やろう」
小柄な彼女が言い切りました。どうやら彼女がこのグループの中心人物のようです。
そんな彼女から言われたのなら、中立派の三人は一気に賛成派に寝返りました。反対派の三人も二人は立場がこの中でも特に弱かったため、すぐに賛成派に。もう一人も自分の意見を貫き通す“我”が弱いのか、苦笑いを浮かべながら賛成派に回りました。
これで十割。少年は飛び跳ねて喜びを露わにしました。これには元中立派と元反対派は賛成派に移ってよかったと思いました。無邪気な少年の笑顔。これを無下に断る勇気がどこにあるのでしょう。
「ありがとう!」
「どういたしまして」
「じゃあ、お姉ちゃんたちの名前を教えてよ。せっかく遊ぶんだから名前を知らなくちゃ」
「名前か。いいよ。でも覚えられるかな?」
中心人物である彼女がバカにしたように言いました。少年は「覚えられるから言ってみてよ」と言います。
「じゃあ、私の名前は」
彼女たちは順番に自己紹介をしていきます。少年はフンフンと頷きながら彼女たちの自己紹介を聞いていきました。
「覚えたかな?」
「うん。覚えたよ」
「えー。嘘だあ」
おでこを出した少女が言いました。
「嘘じゃないよ。はるっぴお姉ちゃん」
「え?」
少年はムッとしながら答えました。これには皆、驚きの顔を隠せないでいます。
「児玉遥。通称『はるっぴ』。どう? 間違ってないでしょ」
「せ、正解……」
「じゃあ、私は?」
「『麻里子さま』。本名は篠田麻里子さん」
固まる一同。大人ですら彼女たちの名前を覚えるのは至難の業でしょう。それもあだ名まで。
そんな彼女たちに対し、少年は勝ち誇ったかのように続けます。
「身長が一番低いのが、『たかみな』こと高橋みなみさん。お人形さんみたいなのが『まゆゆ』こと渡辺麻友さん。W松井の肌がすごく白いのが松井玲奈さん。麻里子さんから『じゅり坊』と呼ばれてるのが松井珠理奈さん。関西弁で目が特徴的なのは『さや姉』こと山本彩さん。ニコニコ笑ってるのが渡辺美優紀さん。通称『みるきー』。新幹線と同じ名前なのが宮脇咲良さん。これでどう?」
少年は詰まることなく、
滔々と全員の名前を言い当てました。
唖然とする一同。
「すごくない? え、君何歳?」
「五歳だよ。すごくないよ」
「いやいやいや。ありえないって」
篠田麻里子が彼の年齢を聞くと、高橋みなみがツッコミを入れます。
「私だけ呼び捨て……」
「ごめん。でも僕をバカにしたような言い方するからだよ」
児玉遥は少年に呼び捨てにされたのがショックのようです。
「まあ、もういいじゃん。名前も覚えたんだし、早くやろうよ」
「でも君の名前を聞いてないよ」
「そんなことはいいから早く!」
渡辺麻友の問いかけにも、少年は早くやろうと急かすだけ。
「じゃあ誰が鬼やる?」
この一言で彼女たちが口々に指名を始めました。指の差し合い。否定のしあい。痺れを切らした高橋みなみが手を上げて自分がやろうと言い出そうとした時でした。
「鬼は僕がやるよ」
少年はキッパリと言いました。
「え? でも」
「いいから。じゃあ今から三十秒数えるから早く逃げてよ」
さすがに彼を鬼にするのはどうなのかと、彼女たちは思いましたが
「いーち、にー、さーん」
彼が数を数え始めると、すぐに皆移動を始めました。
どうせお遊びだから。彼女たちはそう思っていました。誰かが見つかって鬼になればいい。少年に花を持たせてあげようとしたのです。
ですので皆遠くには行かず、近くの木に隠れるなどしています。高橋みなみに至っては芝生の上に仰向けになっているだけです。