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蝉が忙しなく鳴くこの場所。東京ドームほどの広さを誇る公園です。緑豊かなこの公園は芝生も若く、ロッジも点々と建っています。
ここで彼女たちは新曲のプロモーションビデオの撮影に来ていました。しかしこの暑さに機械が壊れてしまったようで、撮影は中断をされています。彼女たちは悪戦苦闘しながら機会を直すスタッフたちから離れ、この場所まで来ました。
「直るのかな?」
「てか直んなきゃ撮影できないし」
「そうだよねえ」
小柄な女性と身長の高い女性が話し合っています。といっても、彼女たちにはどうすることも出来ませんが。
「直らなかったら早く帰れるんですかね?」
どうやらおでこを出した少女は早く帰りたいようです。
「分かんないよ。どうしてそんな早く帰りたがってるの?」
「暑いから」
もう一人の少女は呆れかえってしまいました。他の彼女たちは苦笑しています。
「確かに今日は暑いもんねえ。こりゃあ日本もそろそろ危ないですかねえー」
「なんであんたはそんな嬉しそうなん」
関西弁の彼女たちは性格がまるで違うようで、ニヤニヤとした彼女に、もう一人の彼女はツッコミを入れました。
吹き抜ける風は生暖かく、木々の下だというのに、暑さを凌げないでいます。ハンカチで汗を拭う人もいれば、パタパタと煽る人、フラフラと出歩いている人と、それぞれ思い思いのことをしながら待機していました。
と、そこに
「お姉ちゃんたちどうしたの?」
と、声をかけて来た少年がいました。
「うん? お姉ちゃんたちは撮影に来たんだけど、機械の調子が悪くなっちゃって、直るのを待っているところだよ」
「じゃあ直るまで暇なんだね」
「まあ、そうだね」
少年よりも四十センチほど身長が高い彼女が答えると、彼は嬉しそうな顔をしました。本当に嬉しそうな顔。まるで玩具を買ってもらったかのよう。
「ねえ、鬼ごっこしようよ」
「え? 鬼ごっこ?」
「鬼ごっこって、あの鬼ごっこ?」
少年の言葉に彼女たちはざわめき始めました。その騒ぎを聞きつけて、フラフラと出歩いていた人も戻って来ます。
「鬼ごっこねえー」
「いいじゃん。やろうよ」
「えー。暑いから私はちょっと」
彼女たちは十人十色の反応を見せます。