エピローグ
01
 少年と少女が追いかけっこをしています。二人は歳の離れた兄弟なのでしょうか。
 少女が必死に少年を追いかけています。きっと少年は悪戯をしてしまったからでしょう。怒られるのが怖いはずの少年の顔には笑顔が見えます。お姉ちゃんに遊んでもらえることが楽しくてしょうがないといった様子です。

 月が大きく輝く夜。『スーパームーン』と呼ばれるこの日は、月が最も地球に近づく日で、いつもより大きく見えます。
 だだっ広い公園。追いかけっこやかくれんぼ、鬼ごっこをするのにはもってこいの場所です。そこで少年と少女は若い芝の上を駆けています。

 同世代から比べると、少女の足は遅いように感じます。それでも相手が少年のためか、徐々にその距離を詰めていきます。
 月のシルエットを受けた二人。ようやく少女が少年を捕まえました。

 芝生の上でじゃれる二人。仲睦まじく見えます。ゴロゴロと転がり、少女は何度も右手を振り下ろしています。きっと悪戯をされたことに相当腹を立てていたのでしょう。少年に向かって何度も右手を振り下ろします。


 何度も。何度も。何度も――。
   
   
  
   
  
   
    
   
    
  
   

 少女が歩いています。

 蹌踉(そうろう)とした足取り。ゆらゆらと体を揺らしながら、目的地を見失った旅人のように。

 少女は少年と遊んでいました。

 ですが、今は一人で歩いています。

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■筆者メッセージ
(おし・ω・まい)
はるる ( 2013/10/07(月) 18:47 )