2-2
『そいえば理由聞いてへんかったけど…なんで女装なんてしてたん?』
駅から学校へ通う道、彼女にそう聞かれた。
罰ゲームだよ、と答えると彼女は面白そうに笑った。
彼女は同じ学校の1個下だった。
身を助けてもらったあの日から、彼女と学校に通っている。
彼女から一緒に学校に行かないか、と誘われた。一言で言えば、目を付けられてしまった。
彼女はモデルをやっているらしい。雑誌なんか読んだことも無かったので知らなかったが、名前を聞いてコンビニで必死に探した。
多くの雑誌や週刊誌で引っ張りだこになっていることも知った。
そんな彼女たちの間でなぜか僕の女装が話題になり、今度メイク教室をしてもらうことになった。
学校へ向かう道すがら、彼女に色々質問をされた。
正直、女装した気分は悪くなかった。別によかったわけでもないが、今までにない不思議な気分。
ただ、あの一件があった以上、外での女装はもう勘弁だった。
そういえば、あの時の男も勿体無いことをしたもんだな。
僕じゃなくて彼女に痴漢すればよかったのに。
…おっとっと。よかったじゃない変なことを考えてしまった。
慌てて頭に浮かんだ妄想を掻き消し校門をくぐった。彼女とはここでお別れ。
教室につくと、いつものメンバーで席を囲む。
『ねぇねぇ、菜緒ちゃんとどんな話してたの?』
どうやら、女子たちの間で彼女は有名人らしい。それもそうか。女子誌のモデルなんだから。
『菜緒ちゃん…すっごくいい子そうで大人しい子だよね笑』
僕の言葉に周りを囲んだみんなが共感し、その日も授業が始まった。
…
授業が終わると菜緒ちゃん達の教室に呼び出された。
後輩の部屋に呼び出される…というのも緊張するが、内容が内容なのもあってかなり緊張の面持ちで向かった。
『あ、翔くん来てくれたんや!逃げられるかと思たわ…笑』
流石にモデルの後輩に呼び出されて無視しないわけがない。
『じゃあ…翔くんの顔…綺麗にさせてもらうで?』
椅子に座らされると、大きな三面鏡が目の前に置かれた。
そして、僕の顔面大工事が始まった。
…
『うーん、こんな感じかなぁ?』
菜緒ちゃんはそう言った。怖くてしっかり見られていなかった鏡を見つめる。
そこにいたのは1人の美少女だった。ただその美少女は僕が口を開けると口を開け、目を閉じると一緒に目を閉じた。
鏡に映ってる美少女は僕だった。あまりの変貌に戸惑いながらも、菜緒ちゃんはすっかり満足そうだった。
『○○くん…可愛くなったやろ?これで…街中歩いてみない?笑』
してみない?という口調ではあったがその中には、『勿論するよね?』という意図があったように感じた。
菜緒ちゃんがカバンを漁ると中からはウィッグが出てきた。黒、茶、金にロング、ショート等々…
一つ一つ順番にそれを被ると、本当に女子にしか見えなかった。
『じゃあ〇〇くん…行こうか笑』
気に入ったウィッグを見つけるとそれを僕に被せ、菜緒ちゃんはそう言った。
2人の女子(?)は街中へと歩き出した。