堕落
08
電話口からはさっきの物腰の低い男だった。
「すみませんじゃないよ。君のところは従業員にどんな教育をしてるんだ。さっさとチェンジしてくれ」
「ハイかしこまりました。チェンジされるのですね。それならチェンジ料として5000円いただきますがよろしかったですか?」
「何を言ってるんだ。さっきはタダと言ったじゃないか!それにチラシにもそう書いてあるぞ」
「お客様、チェンジやキャンセルされる場合は当店では5000円いただいております。どうなされますか?」
「ふざけるな。他のところ呼ぶからもういい、このババアにも出て行ってもらうからな」
よほど頭に来たのか仲村の顔色は赤を通りこし紫になっていた。
「お客さん、キャンセルするならキャンセル料払ってくれよ。ホテルの前にはウチの若い衆いるんだからどうすんだ」
さっきまでの物腰の低い態度とはうって変わり、遠めにヤクザくさい事をいった。
「お客さんどうするんですか?金払うのか、若い衆を行かせるの決めてくださいよ」
「でも、さっきとは話が違うじゃないですか・・・」
仲村はビビリ紫だった顔から血の気が消え白くなっていった。
「お客さんどうするですか?」
電話口からは問いが来た。
「・・・・・・」
仲村は黙り込んでいた。
「あっ!」
レナというババアが急に声を上げた。仲村はレナの視線のほうを見るとテーブルの上の注射器を見ていた。
テーブルには先ほど売人から貰った注射器が置いてあった。玄関に向かう時に慌てていて置き忘れてしまっていたのだ。
(やばい)注射器を見つかってしまった。仲村は頭の中が真っ白になった。
仲村はテンパってしまい。電話をレナに返すと慌ててテーブルから注射器を取りポケットにしまった。
注射器など何と言い訳すればよいのだ。拾った・・・いやそれなら何故隠した。病気の薬を打つ為・・・何の病気と言えばよいのだ。仲村はテンパっていた。
「すぐにおり返します」
レナはそう言うと電話を切り仲村のほうを見て微笑んだ。
やばい、あのババアの事だ。黙っておいてやるから金よこせなどと言うだろう。どうすればいいんだ。
「あんたもやるの?」
「・・・・・・えっ?」
あんたもやるの?レナの問いに仲村はますますテンパった。
「だから、あんたもシャブやるのかって」
あんたも?まさかこのババアもシャブをやるのか?
「・・・」
「だからあんたもシャブやるのかって」
仲村はうなずいた。レナは微笑んだ。


迎夢 ( 2013/07/31(水) 10:20 )