堕落
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「龍道組」と刺繍をしている作業着を来た高山が成田に挨拶した。
ヤクザの事務所は映画に出てくるような事務所の作りである。これなら堅気の人間が見たらビビッてしまう事間違いなしだ。
成田はソファーに座ると高山が成田と仲村にお茶を出した。
「それで仲村さん、開門アニキから聞いたんですけど本当にシャブの売をするの?言っちゃダメだけどアンタはシャブ食うだろう?それにシャブあつかうて事はパクられたる覚悟あるのかってことだよ?」
成田の迫力と正論に仲村は言葉を失う。
「・・・・・」
「龍道組うちは都内でも10本に入るネタ屋だよ。シャブ屋だから組員60人いて30人が懲役だよ。開門組に関しては30人いるけど20人以上が刑務所だよ。それでもシャブの密売したいのか?」
なんという世界だ・・・半分以上が刑務所とはありえない世界だ・・・
「・・・その・・・なんでそんなに刑務所に入ってるんですか?」
「風俗や金貸し博打は警察はさほどうるさくないけどシャブをあつかうって事に関しては警察は物凄いうるさい。それにシャブの密売する者は自分でシャブを食う人間が多いからだ。仲村さんだってシャブが目の前に有ったらやるだろ?」
たしかに成田の言う事はもっともである。おそらく仲村は目の前にシャブがあればやってしまうだろう。
そして麻薬の密売は警察に捕まる可能性が高いのは事実だろう。
しかし疑問に思うこともある。麻薬の密売などどんな事をすればよいのだろうか?
「ちなみに麻薬の密売とはどのような事をするのですか?宅配すれば良いだけじゃないのですか?」
「まあ詳しくは言えないけど龍道組は組員は9割はシャブの密売で食って行っている。おそらくはシャブ以外でまともなシノギをしてるのは開門怪道ウチのアニキだけだ。開門アニキは知っての通りシャブを自分で食うから親父から厳しく触らないように言われてるからな」
「はあ、そうなんですか?」
何と言っていいのか答えようが無い・・・
「シャブの密売って行ってもシャブ欲しい客いるのか?」
シャブが欲しい客と言われても正直な話、ココロをシャブ漬けにして変態したいだけだ。
「いいえ特にシャブが欲しいと言う客はいません」
「そうか・・・なら高山!お前、客どれくらい持ってるんだ?」
「自分の客は末端コシャばっかりなんで本当に03、05の世界ですよ。末端コシャなら30人くらい居ますね」
「30人も居れば月に100g出るんだろ?一人でやってるのか?」
「まあ良い月で100gくらいです。自分は本当にコシャなんで・・・」
1ヶ月に100gの覚せい剤を密売して末端コシャとはどんな世界なんだ・・・
「そうだよな。高山は大体、毎月100くらい注文あるもんな、売人何人使ってるんだ?」
「池袋のホスト崩れ1人だけです」
「なら、仲村さんを使ってやれよ。密売のしかたも高山が教えてやれよ」
「・・・・・」
高山は黙り込んだ。
「嫌なのか?嫌なら他の奴を探すけど?100もさばいて売人1人じゃ少ないだろう?それにお前ヤクザはまだ半年だけど元々シャブの売人だろ?売人に関して言えば結構な歴だろ?」
「いや別に嫌じゃないんですけど・・・」
「けどなんだよ」
「実は・・・仲村は元々自分の客だったんですよ。だからオレの下で使うのはちょっと・・・」
「じゃあ客紹介して、シャブを卸してやれよ。値段は仲村と高山の話だから俺は一切タッチしないからよ」
高山は仲村の目を見つめると言った。
「・・・おっさん本当に捕まっても成田の兄貴や俺の事をうたわないか?」
仲村はそれだけは自身がある。それにヤクザに監禁された時に免許証をメモされた。警察に密告チンコロしたら命の危険まである。
「それは絶対にありません。それに私は監禁された時に免許証をコピーされました。何か有ったら親にまで迷惑をかけます。皆様のことは絶対に喋りません」
成田は仲村の話を聞くと笑い出した。
「なっ、高山お前の客を3人くらい紹介してやれよ」
高山は少しだまりこんだ。
「・・・わかりました。今日は当番なんで明日でも仲村にシャブの密売のやり方を説明します」
「そうか、良かったな仲村さん。絶対に口は割るなよ」
成田はそういって喜んだ。
仲村も密売する気は然程ないがシャブが手に入るルートが出来たので嬉しかった。



次の日も仕事はいつものように単純で刺激が無い。
防犯カメラでココロを見てもう少しでシャブで変態してやるからなと思うだけである。
抜道の妻の仕事が終わり高山の連絡を待ちながら自宅に帰った。
高山の連絡を待っていると仲村の携帯電話が鳴った。
「オレだけどおっさん、仕事の段取り教えるから迎えに行くよ。今どこに居るんだ?」
「豊島園の近くです」
「そうか今池袋だから15分もしたら着くから豊島園まで来いよ」
「わかりました」
そう言うと仲村は自宅を出て豊島園に向かう。

迎夢 ( 2013/08/11(日) 03:50 )