堕落
43
次の日、仲村は朝7時に目を覚ました。
携帯電話を見ると山谷からのメールだ。
「どんな仕事でも継続は力です、頑張れ。タカシには山谷が付いています」
何と律儀だろうちゃんとメールを返してくれていた。
とりあえずは今日から抜妻の店で仕事だ。3ヶ月ぶりの仕事となるとやはりやる気も出るものだ。
シャワーを浴び軽い食事をして仲村は10時には自宅を出た。
そして電車を乗り抜道の妻がある雑居ビルに言われた時間より1時間も早く付いた。

待つ事1時間、昨日のチンドン屋の福永が眠そうな顔をしてきた。
「福永さんおはようございます」
「あ・・早いですね。待った?」
「初日なんで遅刻してはいけないと思って早く来ました」
「そうなんだ。今店の鍵開けるから待って」
そう言うと店の鍵を開け店内に入る。
「もう15分もすれば女の子が来るから紹介するからね。仕事内容なんて馬鹿でも出来るから見てればすぐ覚えるよ」
そう言って福永は店のカウンターの後ろの待機部屋に行った。
仲村も福永と一緒に待機部屋はテレビのモニターが店の入り口の部屋と女の子の待機部屋2つ映し出されていた。
「こっちが玄関のモニターで客来たりしたらチャイム鳴るからわかるけど一様はここでも確認できるから、そしてこっちが女の子の待機部屋ね。イジメとかはないけど変な事したら困るから一様は見張ってる」
女の子が変なこととは?一体どういう意味なのだ?
「玄関はわかるんですが女の子の待機所は女の子嫌がりません?それに変な事ってどんなことするんですか?」
「仲村さんは本当にこの業界初めてなの?」
「この業界とは?」
「風俗だよ」
「はい、初めてです」
「なら2、3日すればわかるよ。大体どこの店にも監視カメラは付いてるし女の子は商売道具と割りきらなっきゃダメだよ。女の子が何するわけじゃないけど頭が弱い子が多いからね」
「はあ、そうなんですか」
「それとこれはどこの店でもそうだと思うけど2つの決まり事だから覚えておいて。1つ店の子と男女の関係なってはいけないこと1つ従業員通しの金の貸し借りは禁止」
「体の関係と金銭を気を付けることですね」
そうこう仲村と福永が話しているとチャイムが鳴り店の女の子が来た。
仲村は福永に連れられて女の子に挨拶をした。
12時になると女の子も3人ほど店に来て仲村は人通りに挨拶をした。本番有りの店なので特別いい女がいる訳ではないがやはり女に囲まれていると楽しいのが本音であろう。
12時20分、開店して20分目で1人目の客だ。
福永は「いらっしゃいませ」と言って時間と指名の確認を取った。
客は写真指名2000円で時間は45分15000円
「45分15000円と写真指名料2000円で17000円になります。後はホテルで2500円かかりますのでご了承ください」
福永はそう言うと女の子の写真を客に見せて選ばせた。
客は女の子を写真で選ぶと福永は代金を受け取り「少々お待ちください」と言ってカウンターの後ろの待機室に行って代金を金庫に入れると裏口から女の子の待機所に行き指名された女の子を呼びに行った。
女の子は福永に言われるがままに部屋から連れられて店から支給される小さなカバンを持って店の前移動された。
店の前に女の子を移動させると客を呼びに行きそこで客と女の子を会わせて2人でホテルに向かうシステムのようだ。
「行ってらっしゃいませ」
福永は客にそう言うと店に入り出勤伝票に時間と女の子の名前を書いた。
5分もすると店の携帯電話が鳴った。
福永は携帯に出ると出勤伝票に「209」とホテルの部屋番号を書いて携帯電話を切った。
そしてタイムウォッチを30分でセットして女の子の名前をホワイトボードに書きその横にタイムウォッチを置いた。
「これが鳴ったら女の子に残り10分だからシャワー浴びて終わる準備をしろという電話するんだ。よく忘れるから覚えとけよ」
仲村も言われればデリバリーヘルスを利用した時に女の子にそのような電話があった記憶を思い出した。時間お知らせコールはこんな原始的なやり方だったのだろう。
仲村はふと疑問に思ったことを聞いた。
「客が射精イッテ無い場合はどうするんですか?」
「それは女の子にまかせっきりだけど多少の時間オーバーは仕方ないと思ってるよ。5分くらいはあまりうるさく言わないけど10分以上になると怒ったりもする時もあるね」
「その時はお客から延長料金などは貰ったりしないのですか?」
「たまに15分とか遅れたら貰う事はあるけどほとんど無いよ。客に延長金を払ってくれって話になると揉める事が多いからね。一応は客商売だからお客様は神様ですだからね」
「なるほど」
「それにウチは本番屋だから客もポン中や年寄り以外はロングなんかいないしね」
仲村は福永のポン中の言葉に反応してしまった。
「ポ、ポン中ってよく客で来るんですか?」
「まあわかんないけどね。たまに目をギラギラさせすぎて職質かけられたらアウトって人いるよ。それにそんな人の方が利用時間長いから店も女の子も喜ぶしね。それにウチみたいな本番屋は女の子も好きな子が多いからね」
福永はそう言うと笑い出した。
仲村は何と返答してよいのかわからなかったがシャブはもう二度とやらないと決めたハズなのに心の中では従業員の女の子がシャブ好きがいるとわかると物凄く胸がときめいた。
「本当ですか?」
「ここだけの話だよ。秘密だからね」
福永はそう言って人差し指を口の前で立てて喋ればダメのしぐさをした。
「・・・・」
「まあ仕事内容はこれだけだから後は今日1日、やれば明日には一人で出来るよ」
「はあ今日は何時までなんですか?それと明日は何時からですか?」
「まあ今日は最後までだね。そして明日からは昼勤をしばらくだね。休んだり辞めたりしないでくれよ。今はオレ一人しかいないんだから」
「大丈夫です。頑張りますんで・・・それより今日最後までいれば始発の電車になっちゃいますけど?」
「初日だから我慢してくれよ」
たしかに初日くらいは仕方ないなと思い。
「わかりました」
と答えた。
そうこう話していると2人目の客が来た。
仲村は先ほど福永がやったように客から利用時間と指名の有無を聞いた。

客はフリーの60分だった。
仲村は料金を受け取ると客を客室に案内して女の子を呼びに行った。
「フリーの場合は基本は客付きの少ない女の子の方を優先的に出すが今はどっちでもいいよ。人気ある子は絶対にフリーではダメだよ」
福永は仲村に耳打ちしてくれた。
仲村は女の子の待機室に行くと小柄な方を呼んで店の前に立たせた。
そして客を呼びに行って。女の子と対面させて先ほどのように「行ってらっしゃいませ」と挨拶して客を送った。
出勤伝票には今行った小柄な女の子の名前と時間書き入れた。
5分もすれば店の携帯電話が鳴り302号室との連絡があったのでタイムウォッチを50分にセットし小柄な女の子の名前を書きホワイトボードに置いた。
何と簡単な仕事だ。仲村はそう思った。
「ああそれと危険な客が来た時は電話で女の子が鈴木さんに代わってくださいって言うから」
危険な客とは何なんだ?
「危険な客とはヤクザとかですか?」
「そうじゃないんだけど無理矢理変態プレーやりそうだとか頭がおかしいっぽい客の場合はそういうから覚えておいて」
「はい、もしそうなった場合はどうするんですか?」
「どうもしないけど部屋番号をちゃんと覚えたり時間コールの時になんかされたか聞くだけだけどね」
「何かとは何ですか?」
「女の子の嫌がる行為を強要したかとかなんだけどね。無理矢理精子を飲ませようとしたり、ウンコ食わせろだとかね。たまにあるんだよ」
「そういう場合はどうするんですか?」
「時間コールの時に女の子が店でお金落としたと言うからそうなったら開門さんに連絡する事」
開門のような暴力大将なら客でも何をするかわからない。
「呼んだらどうなるんですか?」
「そっから先はヤクザの話になるから分からないけど月に1度位はあるよ」
「そうなんですか」
「大体は毎日夜に集金に来る開門さんの舎弟の成田さんが来るけどね」
「成田さんってどんな人なんですか?」
「どんな人と言われてもね。今日の夜は紹介するから最後までいて欲しいんだ」
「わかりました。」
そんな話をしていると3人目の客が来た。
仲村は先ほどのように客の受け答えをした。

迎夢 ( 2013/08/11(日) 03:48 )