堕落
35
ズボンを脱ぎ下半が丸出しの開門はスネから上に刺青が入っていた。想像するに身体全体に刺青が入っているだろう。
「おい!お前、死にたくないならしゃぶれ」
開門は見た感じにバリバリに極まっていた。目を真ん丸くして喋った。
「勘弁してください。私はそっちの趣味はないので許してください」
仲村は手を付き土下座して開門に謝った。
しかし開門はバリバリに極まっているそんなことでやめれる状態ではない。
「お前、本当に殺すぞ!言う事を聞かないならケツの穴にコレを突っ込むぞ」開門はそう言うとピストルを突きつけた。
開門の顔はヤバイ。目がギラギラだ。これ以上怒らせると本当に殺されそうだ。
仲村は殺されるよりはましと思い決意を固め開門の改造チンポを握った。
すると開門はピストルの底で仲村の頭を叩いた。
「痛ってえぇぇー」
ピストルは金属だ。仲村はあまりの痛さに倒れ込んだ。
開門はニタ付きながらいった。
「馬鹿野郎、俺はホモじゃねえよ。冗談に決まってるだろう。お前の反応が見たかっただけだ」
極まっているせいかヘラヘラしながら言った。
「・・・」
「馬鹿野郎、冗談に決まってるじゃねぇか俺はオカマじゃねぇぞ」
「・・・」
「安心しろ。親分がお前のことをどうするか決めるまでは殺しはしねえからよ」
「・・・そうですか」
複雑な気分だった。開門とホモ行為をしなくて良いのは助かったがさっきいた組長という人間が殺せといったら仲村は殺されてしまうのか?何とも説明しがたい心境に成った。
「それよりお前なんでシャブなんかやったんだ?」
「会社をクビになってしまってすべてが嫌になり自殺しようと思ってシャブを飲んだらすっかりハマッってしまいました」
「死のうと思ってシャブ飲んだのか?」
「そうです」
シャブでボケているので開門は笑い出した。
「ギャハハハ。それでシャブにハマッタのか?」
「はいそれからです」
「俺なんかはな15の時に初めてシャブをやって19の時に殺人未遂で少年院に入って、21の時出てきてまたシャブやり22の時に抗争で相手を日本刀で切って〜〜〜」

開門は身の上話を語りだした。
「その時、俺が相手組員を3人ボコボコにして、車のトランクにつめてさらったんだ。でその組員どうしたと思う?」
何だこの開門という男はシャブでも癖が有るがこの男は一回しゃべりだせば止らないのか?
「・・・」
仲村はどのように答えてよいのかわからないので黙り込んだ。
「コラ!聞いてるのか?殺すぞ」
開門は仲村に銃口を向け怒鳴った。
「聞いてます。その組員3人をどうしたんですか?」
「どうにか許してくれって謝るからな。俺も一人前のヤクザだ。向こうが非を認めて謝るから許してやった」
「・・・許してその後はどうなったんですか?」
「俺が怪我させたから病院に連れて行ってやったんだ。俺は練馬一家龍道組の開門だ。その辺のチンピラとは訳が違うんだ」
仲村はどう答えていいのかわからない。とりあえずは褒めれば間違いないだろう。
「すごいですね。男の中の男ですね」
シャブで極まっているからだろうその後、仲村の褒め言葉に気をよくしたのだろう開門は約5時間も喧嘩自慢を語った。



開門は目をクリクリさせ口の周りに唾の泡をつけながら喋り続ける。
もう何を言っているのか理解できない。同じことを何度も繰り返し喋っているだけだ。
しかし開門が怖いので仲村は真剣に聞いてるふりをしていた。
「その時、俺が相手組員を3人ボコボコにして、車のトランクにつめてさらったんだ。でその組員どうしたと思う仲ちゃん?」
いつの間にか話してるうちに仲良くなり開門は仲村の事を仲ちゃんと呼ぶようになっていた。そして開門の質問も1時間ほど前したのと同じ質問だった。コレで3回目である。
「相手を病院に連れていたん違いますか?」
1時間前にも同じことを言った。さすがに3回目だと仲村も覚える。
「何でわかるんだ?仲ちゃん凄いな。そうだ相手が素直に謝ったから許してやったんだ」
「開門さんは本当の極道ですね。ヤクザの鏡です。カッコいいですね」
「当たり前だ。俺は練馬一家龍道組の開門だ。その辺のチンピラとは訳が違うんだぜ」
「開門さんは本当にカッコいいです。あこがれます」
仲村は飲み屋のホステスのように開門をほめ続けた。
「でな。その2年後にな俺が36歳の時に最後の懲役から出て来た時だ〜〜〜」
開門はまた同じ話を繰り返した。シャブを食えばいろんな癖があるが開門はホモではなく口から生まれた口太郎のようだ。九官鳥のように同じ事を何度も喋っていた。
仲村はただただ開門をほめ続けた。

開門は迷彩服の上着に下半身を丸出しにした状態で同じことを延々と喋り続けた。
ここまで口太郎になるのも珍しい。

監禁部屋には仲村と高山だけだ。
色々聞きたいことがあるが仲村は高山に何と話しかければ良いのかわからなかった。
あの時お前に出会っていなければシャブに溺れこんな事に成っていないどうしてくれるんだ?・・・いや違う。覚せい剤を教えてくれてありがとう。おかげで人生に楽しみが出来たよ・・・馬鹿野郎違うだろう。
仲村は心の中で喋りニタつく。
「どうしたんだよ?ニタ付いて」
「・・・いや別に」
「おっさんアレからシャブずーとやってたのか?」
仲村は高山の問いにうなずいた。
「俺が公園から消えたから変わりに外人から買ってたのか?」
「そうです」
「俺は3ヶ月前にヤクザになったぜ」
「何でヤクザなんかになったの?」
「いつまでも公園で売人してても仕方ねえからな。どうせならヤクザやろうと思ってな。知り合いが龍道組にいたから知り合いのツテで入ったんだよ。それよりオッサンは仕事見つかったのか?たしか会社の書類無くしたかなんかでクビになったんだよな?」
「まあクビと言っても実際はリストラみたいなもんだよ。仕事はまだ見つかってない。まさかこんな状況で君に会うとは思わなかったよ」
「それは俺だってこんな所でオッサンに会うとは夢にも思ってなかったぜ。仕事もしないでどうやって生活してるんだよ?」
「今は貯金で何とか生活してたんだよ」
「そうなのか。仕事して無いなら貯金でシャブ買ってたのかよ?」
「そうだよ」
「あのシャメの子は誰だよ?オッサンがシャブ漬けにしたんだろ?」
「・・・まあね」
「まあねじゃねえよ。どうやってあんな可愛い子を見つけたんだよ」
仲村はいちいち高山にレナやアユミとの出会いなど本当の事は言いたくなかった。
「シャメの子は昔から知ってる子だよ」
「そうなのかよ。メチャクチャ可愛い子じゃねえかよ。オッサンのこと待ってるんじゃねえのか?」
ヤクザにアユミが待ってる等と言ったら寝取られてしまうかも知れないので仲村は誤魔化した。
「いや。もうシャメの子は警察に捕まって居ないんだ」
「警察デコスケに捕まってオッサンは大丈夫だったのかよ?」
「デコスケって何ですか?」
「ヤクザ用語で警察の事だよ。関西はサツやヒネだけどな」
「警察をデコスケと呼ぶんですか?」
「そうだよ。それよりシャメの子がパクられてオッサン大丈夫だったのか?」
「あの子はシャブで捕まったんじゃなくて家出して補導されただけだから」
「そうなのか。じゃあオッサン1人でシャブやってたのか?」
「まあそうだね。それより私はこの先どうなるんです?いつまでここに監禁されるんですか?」
高山は少し黙り込んで答えた。
「オッサン絶対に俺から聞いたって言うなよ」
そう言われればますます気になる。
「言わないから教えてくださいよ」
「絶対に言うなよ。あと何日かしたら開放されるよ。だから安心しな」
「ほ、本当ですか?」
「嘘じゃねえよ。親父がそういってたから間違いねえよ」
「外人のほうはどうなったんですか?」
「俺は知らないけど開門軍団が連れて行ったなら恐らくは殺されただろう」
「開門軍団ってなんですか?」
「若頭一派の事だよ。若頭のグループの事だ。練馬一家の開門軍団て言えばイケイケの武闘派で有名なんだぜ」
「そうなんですか」
「言い忘れてたけど若頭の前でどおくまんとかなにわ遊侠伝とか言ったら殺されるぞ」
「どおくまん?なにわ遊侠伝?なんですかそれ?」
「知らないならいいけど、どおくまんて漫画家のなにわ遊侠伝て作品に若頭と同姓同名で見た目まで瓜二つのキャラクターいるんだ。間違っても若頭の前ではどおくまん、なにわ遊侠伝って言うなよ」
「そんなに開門さんにそっくりなんですか?」
「笑いそうなくらいそっくりだ。開放されたらなにわ遊侠伝て漫画を見てみろ。そっくりだから」
「今度見てみます」
「それと昨日、若頭がコレいっただろう?」
高山は注射を打つゼスチャーを取った。簡単に言えばシャブをしたか聞いているのだ。
しかし仲村は先ほど開門からシャブをした事を黙って置くように言われた。
「やってませんよ」
「若頭に口止めされたんだろ。別に言わないから隠さなくてもいいよ」
仲村はどう言って良いのかわからずに黙り込んだ。
「・・・」
「若頭はシャブ行くと名前をちゃん付けして読んだり機嫌が良くなるからすぐ分かるぜ。効き目以外は怖くて近寄りたくも無いけど、効き目なら怒ったりしないからすぐにわかる」
たしかに高山の言う通り、開門はシャブをやったら人が変わったようにやさしくなった。
「俺は別に言わないから安心しろって。若頭シャブいったんだろ?」
仲村はうなずいた。
「龍道組うちのくみはシャブ屋だけど親父から若頭にシャブは絶対に渡すなって言われてるから若頭には一切シャブやってないんだ。若頭は自分でシャブ持ってきたのか?」
「私の荷物からシャブ出してやってたけど・・・」
仲村はそう言うと机を指差した。
高山は机まで行くと袋に入った仲村の荷物を開けた。
「シャブなんか無いぞ」
「私に言ってもわからないですよ。さっきまで有ったんですよ」
「もしかしたら若頭が持って行ったかも知れないな。量はどのくらい有ったんだ?」
「1g」
「若頭はどれくらい行ったんだ?」
「メモリ20位を2回」
「そんくらいなら大丈夫だな。あの人はメモ30行ってすぐに大福を食える人だからな」
「そうなんですか?」
「若頭はすごいぞ。服の上からでも注射出来るみたいだ」
「さっきも服の上からやってました」
高山はそれを聞くと笑った。
「そうだろ。嘘か本当かわからないが昔1人で5gを1週間で使い切ったていう武勇伝があるくらいだ」
「私だったら1gあれば1週間持ちますよ」
「普通はそうなんだけど若頭は別格だ。10日間寝ないでもシャブ打ち続ける人だ。まあ1gだけなら変な行動しないと思うから大丈夫だけどオッサンにも喧嘩自慢語ったか?」
「3人さらっただとかの話ですね?」
仲村の答えに高山は爆笑した。
「やっぱり言ったんだ。ずーと同じ事の繰り返しだろ?」
「そうです」
そう言うと仲村と高山は爆笑した。
覚せい剤にもいろんな癖があるがポン中の癖の話はなぜか異常にウケる。

仲村は高山と話していると開門を送りに行ったヤクザが帰ってきた。
他の組員がいるので高山との会話は止まった。仲村は2日間寝ていない毛布に包まっていると睡魔が襲ってくる。
気が付くと仲村は眠っていた。


迎夢 ( 2013/07/31(水) 10:32 )