堕落
22
「サンキュー。今警察ウルサイ、ヤクザモウルサイ。ダカラ注意シテヤリマス。初メテノ人ハコノヨウニ取引スル」
「そんなにうるさいのか?」
外人の言うことも分かる。路上で渡せば簡単なのに遠まわしにファミリーレストランまで誘導してから密売する。コレなら警察と思われる怪しい車や私服警察と思われる者が一緒に着いて来たらやめればいいし、ヤクザも同じでファミレスなどの一般の人がいるところで変な事は出来ないだろう。
「次カラココニ電話クダサイ練馬辺リハ私タチ担当。前ノ番号ハ捨テテクダサイ、スグ無クナリマス」
外人売人は新しい連絡先の書いた番号を仲村に渡した。
イラン人が言ってる事が本当ならイラン人麻薬密売人達は都内に何箇所ものグループを作って場所によって縄張りのようなものがあり、完全に組織化しているのだ。練馬区辺りはこのイラン人グループが仕切っているのだろう。
おそらくは大久保で会ったような新規の客見つけ担当、電話受け担当、場所により密売を担当、そしてそれを仕切るボスなどとヤクザ顔負けの組織になっているのだろう。
仲村の電話口の声とモノを渡しに来たヤツの声が違うのはそのためだろう。


しかしそれよりもシャブを手にした事により、もうすぐシャブをやれるという期待で便意を催す。
とりあえずは自宅に帰ろうとファミレスの支払いを済ませるとイラン人と別れた。
自宅に向かう途中に高鳴る胸を抑えレナに電話をした。
電話口のレナは覚せい剤が手に入ったのかとの期待から猫撫で声である。
「手に入ったの?」
「うん、そうなんだけど?」
「えっホント!今ドコなの?」
よく考えたらなぜレナにシャブを無料でやらなくてはいけないのだ?はじめの時は好奇心で無料
タダ
でやったがレナのような年増なら一人でこもりオナニーしていた方が良いかもしれない。レナは女の癖にシャブの量が多い。仲村とレナが宇宙人になれば一晩で覚せい剤05gはなくなってしまう。
もちろん仲村一人なら覚せい剤05gあれば2、3日は十分楽しめる。
「お前もいくらか出してくれないか?ちょっと金銭的に苦しいんだ」
「何言ってんのよ。アンタみたいなハゲが他に女なんか出来るわけないでしょ」
本当に口が悪い女だ。仲村は腹が立った。別にキメセックスなんかレナとしたい訳じゃない。
「もういい、電話してこないでくれ」
そう言うと電話を切り、携帯電話の電源を切った。
別にキメセックスしなくてもキメオナニーをすればよいのだ。あの高飛車なレナは本当に腹が立つ事がある。
仲村は自宅へと急いだ。

自宅に着くと、急いで封筒の中身を確認した。
封筒の中身はビニールのパケ袋に入った覚せい剤とインシュリン用の注射器一本だ。
量的には公園の若者とさほど変わらないだろう。およそ05gであろう。
仲村は一週間ぶりのシャブである。


迎夢 ( 2013/07/31(水) 10:25 )