堕落
21
仲村は歩いて数分の練馬駅に着いた。そして人けが少ない場所に行くと外人売人に電話した。やはり後ろめたい事をしているので人目を気にしながらの電話だ。
「練馬駅に着きました」
「マダ10分クライカカル、ドンナ格好シテル?」
「帽子かぶって、ジーパンに緑のトレーナ着てる」
「OKツイタラ電話スル」
そう言うと電話は切れた。
なんで駅前なんだ。人がたくさん居るではないか、薬はやりたいがまさかこんな場所で取り引きするのか?
仲村は疑いながらも早く来ないかとあたりを見回した。
そうこうしていると仲村の携帯電話が鳴る。外国人売人からだ。
「はい」
「アナタ今ドコ?」
「駅前に居るよ」
「・・・OK、ワカリマシタ。ソノママ左ニ歩イテクダサイ」
仲村は外人の指示に従い歩き出した。こんな所で取引をするのではない様だ。ひとまずは安心した。
「あとどれくらい歩けばいいんだ?」
「モウ少シデ、ファミレス有リマス、ソコニ入ッテクダサイ。出来レバカドノ席オ願イシマス」
仲村は言われるがままに駅から数分のファミリーレストランに入った。

「いらっしゃいませ。お客様1人でございましょうか?」
「そうです。後でもう一人来るとは思いますが」
「喫煙席と禁煙席ありますがどちらになさいますか?」
「あそこのかどの席は禁煙ですか?」
「ハイあそこは禁煙席ですがそちらでよろしかったですか?」
「あそこにしてください」
仲村はそう言うとウェートレスに席を案内された。
店内はさほど客も居らず、若者が数名いるだけだ。仲村は奥の席に座ると外人に電話した。
「店に入ったよ。トイレ側の席で緑のトレナーに帽子かぶってる」
「OK行キマス」
そう言うと電話は切れた。
もう来るのだろうか?仲村は期待と恐怖で変な気持ちだった。どんな外人が来るのだろうか?ファミレスなので麻薬取引に似せた強盗や警察などはありえないだろう。
すると来客のチャイムが鳴り、イラン人と思われる男が入ってきた。
店に入るなり店内を一見し仲村を見つめた。間違いない外人密売人
こいつ
だ。
仲村はその外人の目を見つめると向こうも仲村を見つめる。仲村は小さくうなずいた。すると外人もうなずく。間違いない
無言の会話で商売成立だ。
外人はそのまま仲村のテーブルに歩いてきて、席に座った。
「スイマセン、オ待タセシマシタ」
電話口の声とは違うがこいつが売人だろう。仲村の鼓動は高鳴る。
「今あるの?」
「アリマス、先ニオ金クダサイ」
「2万だったよね?」
仲村はそう言うとあたりを見回してから財布から2万出してイラン人に渡した。
外国人売人は金をポケットに入れると封筒を仲村に渡した。
「コノ中ニ入ッテマス」
するとウェートレスが注文を取りに来た。仲村は慌てながら封筒をしまい込んだ。
何も頼まないでイラン人が店を出るのも怪しい。仕方無しに仲村はホットコーヒーを2つ注文した。


迎夢 ( 2013/07/31(水) 10:25 )